この3月20日に山形県山形市がポータルサイト「#推しメンやまがた」を開設した。「推しメン」といっても、これはアイドルタレントではなく、ラーメンのことである。
市内の約100店舗を超える情報を掲載し、バラエティー豊かな山形市のラーメンを国内外にPRすることで、観光誘客につなげるのが目的だ。サイト利用者の「推し店舗」の写真を使ったオリジナル名刺を作る機能もある。名刺には推し店舗のQRコードが付き、スマートフォンで読み込むと、サイドメニューの割引など、特典が表示される。
山形市はラーメンを通じた地域の魅力向上に官民連携で取り組んでいる。約180店から掲載希望が寄せられており、順次、店舗を増やす。自らが好きなラーメン店に「推し投票」をすれば割引特典が受けられることもあり、参加者の増加を目指していくという。
8年連続でラーメン支出額全国1位だった山形市が2021年、新潟市と約300円という僅差で2位になった「新潟ショック」は、山形市民に衝撃を与えた。山形市内の居酒屋経営者が言う。
「ラーメンに関しては山形市が支出金額全国1位なのは当たり前だべ、って誰もが思っていたんじゃねえの。それが新潟に負けて2位になったというのにはたまげてしまった。なんとかラーメン店を応援してやろうという気持ちを、市民たちは強く持ったんじゃないですか。私もそうですけど」
2位という結果を受けて、市のブランド推進課の若手職員が中心となって、ラーメン店主たちと何度も会議を開き、山形市のラーメンを全国に発信する手段を模索していた。その結果、できたのが「推しメン やまがた」だったのである。
今年2月、2022年の家計調査が総務省統計局から発表され、外食ラーメン部門は山形市が1万3196円で、1位奪還に成功した。2位は新潟市の1万2573円、3位は仙台市の1万2480円だった。
この調査が行われたのは県庁所在地と政令指定都市だけであり、県内でもっと1人当たりの支出額が多い都市はあるかもしれない。
1位奪還を受けて、山形市は市役所に「ラーメンの聖地」なる垂れ幕を掲げ、喜びを表した。と同時に市長が「ラーメンの聖地」宣言をしたのである。
いかに山形市がラーメンのことを気にかけているかが分かるというものだ。なぜそんなにラーメン人気が高いのだろうか。市のブランド推進課は次のように分析している。
「ラーメンは御馳走であり、お客様が来たらラーメンを出前してもてなす風習があります。夏場の暑い時期には、山形市発祥の冷やしラーメンをいろいろな店舗で出すようになった。醤油だけでなく、辛みそや魚介系など、種類も多いんです」
市内にはおいしいラーメン店が点在しており、徒歩でも回ることができる。大体の店は駐車場も完備している。また、大都市に比較して価格が安いのも、大きな魅力だろう。「ラーメンの聖地」巡りがブームになって観光客が押し寄せたら、大成功なのである。