ワインなどお酒の質や味を表現する用語は、ウィットに富んでいて独特だ。ソムリエの資格を持つフードジャーナリストは、ワインの表現で顔をしかめるものがあるとして、次のように話す。
「特にフランスの表現はすごいです。『ムスク』は香水の匂いでも有名ですが、動物性の甘く官能的な香りのこと。ロワールのソーヴィニヨンブラン独特の香気を指すものに『ウェット・ドッグ』という表現がありますが、これは「雨に濡れた半乾きの犬の匂い」です。同じく独特の香気を『マウス・ピー』というのは、直訳すると『ネズミの小便臭』。そんなワインを飲みたくなるのかどうか…。他にも『猫の小便臭』の『キャット・ピー』や『ウール・ファット』といって『羊毛脂のような香り』という表現もあります。あとは『石油』だったり『腐葉土』だったり。どれもソソる表現ではありませんが」
日本のビストロやレストランではブラックベリー、トロピカルフルーツ、フレッシュ、バニラのフレーバー、シャープ、辛口、まろやか…といった言葉で味わいを表すことが多い。これがもしフランスと同じように「本場の解説」がメニューに並ぶと、いったいどんな反応が出てくることになるのか。