3月に最終回を迎えた草なぎ剛主演の人気ドラマ「罠の戦争」は「なるほど、そうきたか!」というどんでん返しに、スカッとした視聴者も多いはずだ。だが、筆者がこのドラマを見るにつけ、時折出てくる草なぎの飲酒シーンで思い出したのは、あの事件のことだった。
09年4月23日の深夜3時。東京ミッドタウンの裏にある檜町公園で、意味不明の奇声を上げている泥酔男がいるとして、近隣住民が110番通報。警察官が駆け付けると、なんとそこにいたのが、草なぎだった。しかも彼はスッポンポンで、傍らには脱いだ服がきちんと畳まれていたという。警察官に服を着るよう促された草なぎは「裸で何が悪い!」と抵抗。結局、体にビニールの保護シートを巻かれ、赤坂署に連行されることになってしまったのである。
草なぎは前夜から当日午前2時頃まで、知人らと赤坂の飲食店を2軒ハシゴ。店を出た後、女性と歩いて現場近くまで行き、そこで女性と別れたという。
翌日、警察による自宅への家宅捜査が行われたが、酔っぱらいのご乱行で家宅捜査とは、異例のこと。そこで警察関係者を取材すると、
「むろん薬物所持の確認もありますが、脱ぐのが好きなマニアで、自分の体を撮影して販売する輩もいるため、そのあたりの趣味がないかを調べた可能性があります」
とのことだった。
だが、そんなブツが出てくることはなく、尿検査もシロ。証拠隠滅や逃亡の恐れがないとして翌24日に釈放され、表参道にあるビクターレコードの会議室(01年に公務執行妨害、道交法違反容疑で逮捕された稲垣吾郎の謝罪会見を行った部屋)で、記者会見に臨むことになった。
逮捕された赤坂署から原宿署に移送される際のことを、
「夢なのか現実なのか、わからない状況でした。意識が戻った時には警察にいました」
と振り返った草なぎは、留置場で仮眠をとった後のことを、
「大変なことをしてしまったと実感しました」
スッポンポンになったことについては、
「(香取)慎吾と飲んだ時、僕の自宅でパン1になったことはありましたが、外では初めてだったので…」
自分でも、なぜそうなってしまったのかわからない、という様子で、
「応援してくれるファンに対して、メンバーに対して、本当に申し訳ない」
と謝罪を繰り返した。
ところが当時、SMAPは地上デジタル放送推進のメインキャラクターを務めていたこともあり、騒動に対して鳩山邦夫総務相が、次のように怒りをあらわにした。
「めちゃくちゃな怒りを感じる。なんでそんな者をイメージキャラクターに選んだのか。恥ずかしいし、最低の人間だ、絶対許さない」
すると「いくらなんでも『最低の人間』は言い過ぎだ!」と激怒したファンとの間で、場外乱闘が勃発。くしくも「罠の戦争」に見られるような、永田町にありがちな政治家の傲慢さが浮き彫りになる騒動へと発展することになったのである。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。