決して高給取りでなくとも、今から始められる資産運用術をお教えしよう。注目すべきはズバリ、価格上昇が続く「銀」である。
電気、ガスなどの公共料金をはじめ軒並み値上げと歯止めが利かない物価高騰。厳しい庶民の懐具合を慰める打開策を見つけたい。
そもそも近年、金の価格上昇が続いている。不況や戦争でも暴落しないということで、昔から金は安全資産として人気が高い。とはいえ、周知のとおり値段は高く、庶民が簡単には手を出しにくい。
「『金を持っておけばよかった』とメディアでも取り上げられることがありますが、もはやおいそれと手が出せる代物ではない。すでに1グラム=9437円(小売価格は9552円、4月13日現在、以下同)です。それが年単位ではなく、短いスパンでコンスタントにずっと上がり続けていますからね」(商品市場関係者)
確かに投資対象として魅力的この上ないが、いかんせん先立つものがなければ夢物語にすぎない。そこで目をつけたいのが銀だ。金に比べて格落ち感は否めないが、「2位じゃダメですか?」である。いや、意外にも優良なのだという。
「1グラム100円程度で購入することができますからね。例えば1キログラムの延べ棒だと、金なら1000万円近く用意しなければなりません。それが銀であれば、夢の延べ棒が10万円程度ですよ。そして今年の初めには1グラム100円を切っていましたが、毎月上がり続けて、現在は116.71円です」(前出・商品市場関係者)
銀の価値がじわじわ上昇している舞台裏について、「銀座なみきFP事務所」の代表取締役・田中徹郎氏が解説する。
「確かに銀はおもしろい金属です。太陽光発電の材料として消費されるのではと考えられることで、価格が上昇したりしました。直近の値上がりは、今年3月にアメリカのシリコンバレーバンクが経営破綻したことにより、通貨システムに不安を抱く人たちが金の投資へと流れ、その一部が銀に流れたと考えられます。銀の価格は3月から2割アップしていますからね」
時を同じくしてスイスでも、破綻は回避されたもののクレディ・スイスが経営不安を露呈。管理通貨制度の崩壊が叫ばれる中、投資が貴金属に流れるのも自然のことなのか。商品取引業者が言う。
「高騰する金は10年前のおよそ倍の価格をつけていますが、銀も5年前の倍、20年前と比較すれば5倍程度の価値となっている」
安いうちに買い込んで、価値が上がれば大儲けといきたいところだが、そううまくはいかないだろう。先の田中氏は注意を促す。
「銀は金に比べてマーケットサイズが小さいので、買い占めをすることができます。そのために上がる時はすごく上がるのですが、下がる時もすごく下がるということは理解しておいたほうがいいでしょう」
もちろん、銀投資はハイリスク・ハイリターンだけに本誌も投資を推奨しているわけではない。しかし先の商品取引業者は鼻息が荒い。
「古代エジプトでは金よりも銀のほうが価値が高かったとの話もありますが、現代の相場ではおおよそ90:1で金に分があります。それでも、その比率が埋まってくると見て、銀に走る投資家がひそかに増えている。現状では専門家が煽るようなことがなかったため、まだ銀の価格は手出しできる安さですからね」
「銀世界」は冷え切っているばかりではないようだ。