かつてはバブル経済で日本人の札束攻勢が世界を席巻したが、今や札束攻勢といえば、中国人の専売特許になりつつある。日本人投資家とは、資金力の面も含めて雲泥の差があるようだ。仲介業者スタッフはこう説明する。
「日本人の場合は購入する時に別の物件と比べたりして時間をかけて悩みますが、中国人はフトコロに余裕があって1億円以上の物件でも即断即決。物件情報が出て数分で購入を決めることもあります。一度も下見のために来日しないで買う中国人もいて、配下の従業員が内覧に行き、テレビ電話で部屋の様子はこんな感じですと見せるだけ。契約書は郵送して書いてもらって契約成立です」
中国人投資家が不動産購入の際に考慮しているのは、利回りの確保もさることながら、賃貸に出した場合、居住者が転居してもすぐに新規の入居者の手配ができるようなシステムになっているかどうかだという。そこさえクリアすれば部屋の間取りなどに特にこだわりはなく、不動産業者にとっては実にありがたい上客と言えよう。
「安定した利回りを優先する中国人に人気の都内の町は、飯田橋、九段、御茶の水、後楽園、駿河台、立石、堀切あたり。不動産バブルが起きている北京や上海で購入するよりも半値以下のマンションが多く、契約件数は都内で上位に入っています」(仲介業者スタッフ)
日本の不動産情報を得るため、中国人投資家はSNSの「ウェイボー」や「ウィチャット」をフル活用。かつてのIT後進国といったイメージは完全に過去のものとなっている。仲介業者スタッフが続ける。
「中国は口コミの文化なので、そこでやり取りする情報は信頼度が高いとされています。即時性もあるのでSNS上で知り合った渋谷に住んでいる中国人に、どんな町なのかをリサーチ。それで背中を押されて物件購入を決めた投資家もいます」
もはや投資対象も実に多種多彩。あれもこれも欲しがる強欲な中国人は、ここ数年で都内のホテルや民泊用マンションも積極的に物色しているほど。
「最近でも、『4億円なら現金ですぐに払うから、都内に小さい規模のホテルある?』と問い合わせがありました。日本人の発想だと、ホテルを買ったらどうやって集客するのかを考えます。でも、中国人ならホテルを手に入れる前から、自分で中国から観光客を呼べるので集客の心配はしていません。実際、日本人客は来なくていいから、中国人客だけに特化したホテルも出始めています」(仲介業者スタッフ)
日本の不動産市場はチャイナマネーの攻勢の前に、手も足も出ない状況に陥っていた。