「あ~あ、来年は打たれるんだろうなぁ。だってボクの年俸、その半分なんだもん」
これは野球解説者の江川卓氏が、巨人時代の86年オフに口にした言葉だ。
現役最終年、江川氏の年俸は6000万円(推定)だった。前年オフ、3度目の三冠王を獲った落合博満氏が、ロッテから中日に移籍。4選手との大型トレードで、プロ野球初の1億円(推定1億3000万円)プレーヤーになったのだ。「打たれる」というのは、その落合氏を指してのことだった。
13勝5敗で引退を発表した87年オフ。もし契約更改していたらいくらだったのかと、江川氏が球団に尋ねてみたところ、6800万円との回答だったそうだ。13勝してわずか800万円増。それはミスターこと長嶋茂雄氏の最高年俸8000万円を決して超えることがない、と明言されたからだ。
そんな秘話を明かしたのは、YouTubeチャンネル〈江川卓のたかされ【江川卓 公式チャンネル】〉でのことだ。
では、巨人で初となる1億円プレーヤーは、いつ生まれたのか。スポーツ紙デスクが言う。
「最初に1億円に達したのは93年、原辰徳の1億2500万円と、駒田徳広の1億2000万円。期せずして80年ドラフト1、2位コンビでした。2億円、3億円は、中日から巨人に移籍した落合。01年、松井秀喜が3億5000万円から5億円となり、一気に壁を越えていったわけです」
ちなみに江川氏と落合氏の対戦成績は13打数4安打1打点で、打率は3割8厘。肩痛からスピードを抑えて投げていたと回顧する江川氏が、落合氏をこう評した。
「コントロールだけで、落合さんは抑えられないので」
(所ひで/ユーチューブライター)