プーチン大統領の最側近として知られるペスコフ大統領報道官の長男ニコライ氏が、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の戦闘員として従軍していたと明かした。
ロシアの大衆紙「コムソモリスカヤ・プラウダ」が、ニコライ氏へのインタビューとして伝えたもので、ニコライ氏は「昨年、あえて偽名を使ってワグネルの戦闘員になり、約半年間、ウクライナで特別軍事作戦に参加した」などと主張している。
この報道を受け、ペスコフ報道官は「ニコライは軍事作戦に参加していた。息子がそう決断した」と発言。ワグネルの創設者プリゴジン氏も「ペスコフの息子であることを隠すため、ニコライが偽名で入隊することを認めた」と援護射撃している。
ところが、である。その後、ロシアの独立系メディアが、ウクライナで従軍していたはずのニコライ氏がモスクワで交通違反を犯していた、との疑惑をスッパ抜いたのだ。
複数のテレグラム・チャンネルが報じた疑惑の詳細は、以下の通りだ。
〈ニコライが2023年3月まで所有していたテスラ「モデルX」は、2022年7月24日と11月6日の2回、モスクワで罰金を科されていた。これは、ニコライが「ワグネルの一員としてウクライナで従軍していた」と話していた時期にあたる。結局、ロシアの特権階級とそのボンボンが、徴兵忌避の批判を逃れるためにデッチ上げた従軍話なのではないか〉
この報道にもあるように、ニコライ氏は昨年9月、徴兵事務所の職員を装った独立系メディアの取材に「私はペスコフの息子だ」などと語って、招集令状に応じないやりとりを暴露された「前科」を持つ。しかも、その後の「従軍話」とやらの論功行賞なのか、今年1月には勲章まで授与されているのだ。ロシア政治アナリストが解説する。
「独立系メディアの報道では、ニコライ氏が交通違反切符を切られた日付までが詳細に示されており、その信憑性は極めて高い。しかも、ワグネルのプリゴジン氏は『偽名での入隊だったため、ニコライの従軍記録はない』などと、苦しい弁明に終始している。国営メディアの報道にしか接していない一部の情報弱者は別として、ニコライ氏の従軍話を信じるロシア国民は皆無と言っていいでしょう」
これでは前線に送り込まれた兵士らの士気も上がらないはずだ。