政務活動費913万円をだまし取ったとして、昨年の大号泣会見、そして初公判ドタキャン──。1月26日、ネットでは「ののチャン」とも呼ばれる“人気者”、元兵庫県議・野々村竜太郎被告(49)が「勾引」手続きによる強制出廷させられ、“やり直し裁判”が神戸地裁にて行われた。
黒縁眼鏡に濃紺のスーツ、そしてカツラとも噂された頭部は丸坊主だ。
「この世の中を~ッ! ウワァ~ン!」と大号泣した会見以来、久々に見せたその姿は異様だったが、世界中にインパクトを与えた“ののチャンぶり”は健在だった。
裁判時間は午前10時半から午後4時までと、たっぷり時間が取られた。
傍聴人の一人が言う。
「お金は返したし、県議も辞任した。だから本人は、終わったことだと、どこかで思っているのでしょう。悪いことをしたつもりがないから、全面否認して、あとは『記憶にございません』。真っ向から検察官、裁判所を敵に回しましたね」
確かに、野々村被告は起訴内容を全面否認し、弁護士質問に対しても「記憶にございません」「思い出す努力を続けていますが、思い出せません」などと90回以上も繰り返したのである。
あげく裁判長には3回も「あのね、パッパと答えてくれませんか」などと叱責され、野々村被告の“持ちネタ”か、「不安になると右耳でしか聞き取れない」とまで弁明し、昨年、医師に診察してもらって記憶障害の可能性があると診断されたことを明かした。
ならば、頭髪同様に記憶も「毛頭なし」のはずだが‥‥。
「昨年12月9日だという、その診察日をはっきり覚えているんですからね。また、経費書類の筆跡は認めておきながら、『警察官が書き換えた』などと発言したのも、凡人にはとうてい理解できない。“自分は悪くない”という姿勢ばかりがうかがえました」
こう語る司法担当記者が続けた。
「お金は返していますし、在宅起訴で罪を認めれば、ここまでもつれることもなかったでしょうね。にもかかわらず初公判でエキセントリックな言動を繰り返し、刑事事件が得意な担当弁護士も大変だと思いますよ。いきなり否認でしたからね。ここまでやるとは、笑うしかないでしょう」
気になるのは、先に触れた記憶障害の信憑性だろう。取材を続ける別の記者が明かす。
「高機能自閉症というのがあるんですが、これは専門家に診察してもらわないとなかなか判断しにくいものです。でも、今の野々村被告なら言動といい行動といい、当てはまるかもしれません。とはいえ、初公判後に彼の実母は息子の病気に関して聞かれると、激怒して否定していた。病気が証明されれば、息子が裁判で有利になるかもしれないのにですよ‥‥」
公判で野々村被告は城崎温泉への出張について問いただされると、べそをかきそうな表情になったが、よほど実母のほうが泣きたい心境なのかもしれない。
「本当に自分が何を言ったかなんて、考えてないのでしょうね。あんな被告は初めて見ましたよ。判例では本来なら付いた執行猶予が、なくなったと考えていい。裁判官に悪印象を与えてしまった結果、3月25日まで2カ月間の勾留。次回の公判にも出廷しない可能性があると判断されての決定でしょう。恐らく判決は1年数カ月でしょうが、実刑となればつらいですよ。それをどれほどわかっているのか聞いてみたい。次の公判でもこのまま自分のスタイルを貫いたら、ある意味すごいですよ」(前出・司法担当記者)
次回公判は2月22日。裁判所でしか姿を拝めない“ののチャン劇場”は、また新たな波紋を巻き起こすのだろうか。