LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案を巡り、自民党は5月12日に開かれた性的マイノリティーに関する特命委員会などの合同会議で、反対意見が多いにもかかわらず、議論を打ち切った。近く、法案は国会に提出される。保守派を中心に党内の不満が高まっているが、中でも批判を浴びているのが、自民党の新藤義孝特命委幹事長だ。これまでLGBT問題では稲田朋美元防衛相が批判の矢面に立たされていたが、ここにきて新藤氏が標的とされた。
新藤氏といっても一般にはなじみの薄い人物だが、母方の祖父が硫黄島最高司令官の栗林忠道中将(戦死後、大将)と説明すれば、ピンと来る人は多いだろう。「ダーティハリー」で知られる米俳優クリント・イーストウッドが監督した映画「硫黄島からの手紙」で渡辺謙が演じたのが栗林だった。圧倒的な兵力をもって上陸を図ろうとする米軍を相手に死闘を繰り広げた日本軍のトップとして、米軍をして「最も手ごわい相手」と評価された。
これまで「栗林中将の孫」として保守派から一目置かれる存在だった新藤氏だが、法案反対派が次々と意見を述べる中、「委員長一任」で議論を終結させたのだった。
領土問題や憲法改正など、保守派のアジェンダの課題に積極的に取り組んできた新藤氏だが、自民党内からは、
「憲法改正にしても、掛け声だけではないか」(保守派議員)
などと、その姿勢を疑問視する声が出ている。それは新藤氏の選挙区事情からくるものだ。新藤氏は川口市などを中心とする埼玉2区の選出。当選8回のベテランだが、都市部だけに、公明党の支援を受けなければ当選できないと言われている。その公明党は、憲法改正に積極的ではない。
「新藤氏としては、公明党の意向を無視できないから…」(前出・保守派議員)
というわけだ。公明党はLGBT法案を推進しており、
「今回、新藤氏は図らずも、馬脚を現してしまった」(自民党関係者)
福井県立大学の島田洋一名誉教授は、自身のツイートに「岸田(文雄首相)、茂木(敏充幹事長)のトップ2から今後の厚遇を約束されたと言われる。残念ながら事実なら、栗林中将の孫と言う科白は2度と口にして欲しくない」と批判した。新藤氏はこれらの批判にどう答えるのか。