連日のように石原氏が上げる怪気炎が現実的ではない。
先に触れたように、安倍内閣は憲法改正を参院選前に持ち出す可能性は低い。となれば、連立のパートナー・公明党が難色を示す中で一番人気の自民党が争点にすることは考えにくい。
さらに、ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう話す。
「本当に争点になったとしても、安倍内閣と完全にダブってしまいます。自公過半数獲得阻止をうたう維新の会としては、有権者に自公との違いを訴えにくくなり、選挙戦を不利にする可能性もあります」
国民的関心事とまでは言えない憲法改正が争点では、橋下氏を総理にするどころか、維新の会が与党の一員になることすら難しくなりかねないのだ。
そして、何より橋下氏を総理にするには、国政に進出させなくてはならない。石原氏は盛んに参院選出馬を促す発言をしているが、これも簡単ではない。
「『大阪都構想』をブチ上げている橋下氏が改革半ばで市政を放り出すわけにはいきません。大阪の市民が納得できる後継者を立てるという方法もありますが、すでに全国的な知名度があるアナウンサーには断られたそうです。さらには、大阪府知事である維新の会・松井一郎幹事長(49)との関係も障壁となるのではないでしょうか。松井氏は自民党に近い保守政治家、橋下氏はアンチ既存政党の立場と色合いこそ違いますが、やはりこれまで二人三脚でやってきたという事実に変わりはない。橋下氏も恩義を感じている。その松井氏を置いて、我先に国政へとはいかないでしょう」(前出・鈴木氏)
党大会で石原氏に出馬を促された橋下氏は、その場を笑顔でごまかした。「2万%ない」と言ったあとに大阪府知事選に出馬した過去もある。何が起こるかはわからない‥‥。
しかし、前出・政治部デスクは橋下氏の真意をこう読み解くのだ。
「橋下氏と石原氏の信頼関係は本物と見て間違いありません。そして、橋下氏にも総理になるという野望があるはずです。ただし、理論上は可能だが参院議員から総理になった政治家はいません。それならば、橋下氏は衆院議員として、国政進出したほうがいいに決まっている。安倍内閣が順調に国政運営をしている現状で、少なくとも3年間は衆院選は行われないと思われます。病気になり、あとがない石原氏にしてみれば、参院選に出てほしいのでしょうが、橋下氏は年齢から考えても、次の衆院選に出たほうが得策です。残念ながら、石原氏の願いはかなえられそうにありません」
もはや、石原氏の野望も現実的に規模縮小せざるをえない。そうした最中に、「暴走老人」の異名よろしく威勢のいい言葉を発し続けるのは、老醜と見られてもしかたがないのである。