9月10日~16日は、「自殺予防週間」だ。今年6月に、内閣府が出した「自殺対策白書」には、98年以降14年連続で自殺による死亡者が3万人を超えている現実を伝えている。長い期間、東日本大震災の犠牲者の実に2倍もの方が、自ら生命を絶っている事実が伝えられることはあまりない。
12年以降は2万7千人と減少傾向にある。しかし、自殺未遂を見ると、男性の15.2%、女性の30.8%が未遂歴ありとなっている。
数字の大きさと、どこか遠いところにある「自殺」はもっと身近な問題として考えていかなければいけないことだと言えよう。
「DSM-5」という言葉をご存知だろうか? これは、アメリカ精神医学会が作成した「精神障害の診断と統計マニュアル」の「第5版」である。日本の精神科医が診断の指標に使うマニュアルだ。そこには、
「ウツ病の診断基準の一つとして『死について繰り返し考える』という項目」
がある。WHO(世界保健機関)の調査では、
「精神疾患が原因で自殺した人のうち約3割がウツ病に該当した」
という結果が報告されている。
自殺とウツは深い関係にあるといえよう。
「人間関係」や「仕事へのプレッシャー」などさまざまな要因で忍び寄る「死を招くウツ病」最新刊『「いのち」のままに』で、芥川賞作家で僧侶でもある玄侑宗久氏は「多忙」を例に、こう説明している。
〈いつも『忙しい、忙しい』と思って日々を送っている人は多いと思いますが、実は忙しいということは原理的にありえないことです。たとえば十分しか時間がないときに(略)あれもこれもしたいと思ってしまうため、忙しいと感じるのです〉
つまり、「多忙」というのは「私」が勝手に忙しいと感じてしまうことが原因で、日常生活の多くのプレッシャーは「心」が暴走して、厄介を引き起こすというのだ。
人間は「考える葦(あし)」と言われるが、玄侑氏は「考えない葦」であるべきだと主張する。考えないことによって、心の暴走を抑えるために最適なのは「瞑想」。そこで本書では「考えない葦瞑想法」が紹介されている。
人の心と身体は密接な関係を持っている。自殺予防週間の今だからこそ、こうした瞑想法に取り組んでみるのも、「自殺問題」を考える良いきっかけになるのではないだろうか。