衆院の解散権は歴代首相の「伝家の宝刀」と言われてきた。岸田文雄首相はこの解散権を、5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で政権浮揚した勢いで行使するのではないか、との観測が永田町に流れていた。
しかし、そうした解散風を吹き飛ばしたのが、昨年末に親族を首相公邸に招いた時に撮影した写真。首相の長男、翔太郎氏を更迭した「事件」である。フジテレビの平井文夫上席解説委員は、次のようにツイートした。
「これまでかなりの数の首相を取材してきたが『息子に支持率を下げられて、解散できなくなった首相』というのは見たことがない」
明るみに出た写真で最も問題視されたのが、赤じゅうたんが敷かれた階段に寝そべっている20代半ばの男性だ。写真を掲載した「週刊文春」によると、この男性は首相の甥で、翔太郎氏の従兄弟にあたる。男性の父親は首相の実弟であり、外国人の国内労働を支援する会社の代表取締役。そして母親は、スナック菓子で知られる「湖池屋」創業者の長女。資産家一家で、男性本人は愛知県の商社に勤務しているという。
そして焦点となっているのは、なぜこの写真が漏れ、マスコミに持ち込まれたかだ。今のところ、親族のひとりが友人に送ったのが持ち込まれた可能性が高い、とみられている。
岸田首相は翔太郎氏に注意をしたが、それでも当初は守ろうとした。なぜそこまで息子をかばうのか。首相が率いる宏池会の関係者は、
「ああ見えて、岸田さんは人を信用しない。派閥にもナンバー2の林芳正外相、事務総長の根本匠元厚労相、そして小野寺五典元防衛相と有力者がいるが、いずれも信用していない。信用していたら誰かを官房長官に据えるはずだが、異なる派閥である清和会の松野博一さんを起用した。その松野さんにも、何でも相談しているわけではない。結局、首相が頼れるのは親族だけということです」
本サイトでも紹介したように「異次元の親バカ」ぶりが結局、岸田首相の解散カードを妨げる結果となった。
現在のところ、秋の臨時国会中の解散・総選挙が有力視されている。運がいいと言われる岸田首相だが、今回は自ら運を手放した。はたして解散先送りが、岸田首相の命運にどのような影響を及ぼすことになるか。