やや下向きから、こちらを鋭く見詰める男。「ちょい悪おやじ」のようにも見えるのは、なんと岸田文雄首相だった。米「タイム」誌(5月22・29日号)の表紙を飾ったのだ。
岸田首相は4月に同誌から「世界で最も影響力のある100人」に「指導者」部門で選ばれたばかり。3月にウクライナを訪問し「広島への原爆投下で親族を失い、戦争の痛みを知る」と紹介された。
だがこの表紙では「日本の選択」と題して「長年にわたる平和主義を捨て去り、真の軍事大国になることを望んでいる」と評された。自民党の派閥「宏池会」を率い、「ハト派」で知られてきたが、記事の中でも「世界3位の経済国を軍事力で大国に戻そうとしている」と指摘されたのだ。
映画「アンタッチャブル」の舞台となったギャングの街、シカゴの市長を務めたことがあるラーム・エマニュエル駐日大使は自身のツイッターに「表紙を飾り、おめでとうございます!」と投稿した。
インタビューでは冒頭、首相公邸に幽霊が出るという話が。公邸では1932年の「5.15事件」で犬養毅首相が暗殺され、1936年の「2.26事件」では、岡田啓介首相も襲撃された。ブッシュ大統領は夕食会の最中、嘔吐したこともある。「前任者たちからは『幽霊が出るぞ』と言われてきました。幸いなことに、幽霊に出会ったことはありません」と岸田首相は語った。
「タイム」の表紙を飾った日本の指導者としては岸信介、佐藤栄作、安倍晋三がいる。スポーツでは大リーガーの大谷翔平や、女子プロテニスの大坂なおみが登場している。