岸田文雄首相はキャッチフレーズを連発するのが大好きだが、これほどしっくりくるフレーズはないだろう。「異次元の親バカ」だ。
岸田首相の長男で総理秘書官を担う翔太郎氏が、首相公邸で忘年会を開いた際の写真が「週刊文春」に掲載された問題が、風雲急を告げている。首相がなかなか更迭に踏み切らなかったことについて、TBSスペシャルコメンテーターで元朝日新聞政治部特別編集委員の星浩氏は「永田町では『異次元の親バカ』との声も」と紹介したのだ。結局、翔太郎氏は6月1日付での「クビ」が決まった。
「異次元の親バカ」はもちろん、岸田首相が進める「異次元の少子化対策」を皮肉ったものだ。岸田首相は「聞く力」もアピールしていたが、翔太郎氏をめぐっては、今年1月の外遊中に公用車で観光していた疑惑が出ても交代させるつもりは全くなく、ひたすら守るのみ。今回もコトが明るみに出て、国会で野党議員から厳しく追及されてなお、なかなか更迭しようとはしなかった。身内のことになると「聞く力」は持っていなかったのである。
岸田首相は他にも「新しい資本主義」「新時代リアリズム外交」など、キャッチフレーズは先行するが、政策の具体的な姿はいまだ全く見えてこない。その点、「異次元の親バカ」ははるかにわかりやすいのだ。
翔太郎氏がすぐに辞任せず、6月1日付となることから、ボーナスや退職金も出るのではないか、との疑念も出たが、ともに辞退することになった。後任には翔太郎氏の前任である、山本高義氏が充てられる。
翔太郎氏は再び公設秘書に戻るとみられるが、議員が家族を公設秘書に据える行為は、かねてから問題視されてきた。自民党では子息を後継者とするため秘書にしているケースが多く、禁止は受け入れてこなかった。はたして首相の長男が公費(税金)で給与が支払われる公設秘書でいいのか、これも今後、問われることになりそうだ。