自民党内で派閥の動きが活発化している。
その一つが、これまで親睦団体だった谷垣禎一元自民党総裁が率いる谷垣グループ(有隣会=22人)の派閥化だ。その狙いは何なのか。自民党関係者が明かす。
「実質、谷垣派をまとめているのは代表世話人の遠藤利明総務会長。目的は派閥を拡大させた上で『遠藤派』として幹事長を狙うことだろう。何しろ彼は岸田文雄首相の総裁選で選対本部長を務め、一方では森喜朗元首相とはラグビーを通じた師弟関係にあり、東京五輪では組織委員会の副会長として森氏を補佐した切っても切れない関係。加藤紘一元幹事長亡きあとは『山形のドン』とも『食えない東北の狸』とも言われるだけに、目が離せんよ」
一方、7月8日には東京・芝の増上寺で安倍晋三元首相の一周忌が執り行われるが、最大派閥の安倍派(100人)はいまだに新会長が決まらない。
「今は萩生田光一政調会長、世耕弘成参院幹事長、松野博一官房長官らの五人組による合議制で事が進められている。誰が次期会長にとなると、ドングリの背比べで互いにけん制しあっている状況」(安倍派議員)
しかし安倍氏が亡くなり1年経っても新会長が決まらないとなると、さすがに今後の内閣改造などで冷遇される可能性が出てくる。
実際、安倍氏地元の山口新3区の自民党候補問題でも、次の総選挙では林芳正外相が公認候補に決定し、安倍氏後継の吉田真次氏は比例に回らざるを得なかった。
「バラバラの安倍派がつけ込まれたということ。その焦りから派内は、一周忌が終わったら新会長決定を急ぎ、最大派閥の力を見せつけるべきという空気になっている」(前出・安倍派議員)
菅義偉元首相も、いよいよ派閥結成に動き出す気配だ。自民党関係者が言う。
「以前から派閥結成の噂があったものの、安倍氏が急逝したことで一旦鎮静化していた。しかし一周忌が終われば再びその機運が高まるだろう。岸田政権は異次元の少子化対策などの不評により、各世論調査でのきなみ支持率がダウンしている。関係がギクシャクしている公明党や日本維新の会にも太いパイプを持つ菅氏に期待を寄せる声は多い」
また、茂木敏允幹事長率いる茂木派は、派内で大きな影響力をもっていた青木幹雄元参院自民党会長の死去により茂木氏への求心力が高まりそうな気配で、
「茂木氏が『ポスト岸田』に動き、首相と袂を分かつ可能性もある」(前出・自民党関係者)
安倍氏の一周忌を境に何かが起こりそうだ。
(田村建光)