フジテレビは6月24日と7月1日の2週連続で、映画「タイタニック」デジタルリマスター版を放送する。なにしろ映画のモデルになった豪華客船「タイタニック号」の残骸を見学しようと、冒険家や富豪を乗せて出発した潜水艇「タイタン号」が現地時間の6月18日から消息を絶ち、22日にツアー運営会社が「タイタン号の破片が見つかり、乗客の5人は亡くなったとみられる」と発表したばかり。「破局的爆発が起きた」のだという。このタイミングで映画「タイタニック」が予定通り放映されるのか。
これには既視感がある。6月16日未明に永山絢斗が薬物所持で逮捕され、永山が出演しているフジテレビ製作の映画「東京リベンジャーズ2」の公開が危ぶまれていたのと同じ流れだ。19日に同製作委員会が、予定通り公開すると発表したばかり。フジテレビは事件や事故に配慮して放映、公開を取りやめる「悪弊」を立て続けに破った形だ。
それにしても週に2度、同時進行で「東リベ2」と「タイタニック」の公開、放映の決断を迫られたのだから、関係者にとっては悪夢の1週間だっただろう。
消息を絶ったタイタン号の破片は、タイタニック号の船首から約500メートルの場所で発見されたという。本来は水深1300メートルまでしか潜れない構造なのに、メートルとフィートの単位を勘違いして3800メートルの深海まで潜った人為的ミスが疑われているほか、操縦桿がゲームのコントローラー状であることや、タイタニック号との因縁など、仰天のエピソードが次々と出てくる。
米紙「ニューヨーク・タイムズ」(電子版)によれば、死亡が発表されたツアー運営会社「オーシャンゲート」のストックトン・ラッシュ最高経営責任者(CEO)の妻ウェンディ氏は、タイタニック号沈没時に死亡した夫妻の玄孫だという。
タイタニック沈没時、妻は女性と子供を優先的に乗せる救命ボートに移るのを拒み、夫と共に死ぬことを選んだ。夫妻は映画のクライマックスで海水が流れ込む船室の中、ひとつのベッドで手を繋ぎ、抱き合いながら最期を待つ老夫婦のモデルになったという。
NHKから民放各局まで連日「タイタン号」の捜索を報じ、突如として話題作となった「タイタニック」の視聴率が注目される。そして絶望的な空気に包まれる中、海底から聞こえたという「何かを叩く音」は、いったい何だったのか…。