線路脇に三脚を立てて列車がやってくるのをのんびりと待ち、天気がよければのどかで心地よい時間を過ごす──。世間一般の鉄道写真撮影のイメージはこのようなものになるだろうか。だが実際は、命がけで撮影に臨むこともあるという。
鉄道ライターによれば、
「列車と線路を高い場所から見下ろすアングルで撮る『俯瞰』が好きな撮り鉄がいます。見下ろした構図の写真ばかり撮っている人もいて『俯瞰症』と呼ばれていますね。撮影場所は山の上などになるわけですが、木々がなく下が見下ろせるポイントでなければならない。よく使われるのは送電線の鉄塔の根本。周りの木が伐採されていることが多く、下を見下ろしての撮影ができるんです」
もう一つ、俯瞰ポイントになるのが「崖の上」だという。
「確実に線路を見下ろせますからね。ただし当然ですが危険で、2010年には転落事故が起こっているんです」
場所は群馬県の山中だった。車が放置されているとの通報で警察が調べると、上越線を見下ろす崖で三脚が見つかった。その崖下で撮り鉄の遺体が発見されたのだ。
「ここは確かに危険な場所ではあるのですが、景色が開けているので崖のぎりぎりに立って撮影する必要はないんです。それなのになぜ滑落するほど攻めてしまったのか。かなり昔のことですが、その近くでは30トンもある岩が線路上に落下し、列車が突っ込んで脱線する事故がありました。死者も出ています。撮り鉄の間では、この事故の被害者に呼ばれたのではないか…そんな話も出回っていましたね」(前出・鉄道ライター)
今となっては、このポイントを訪れる撮り鉄も少ないという。