最近の公明党といえば、2021年の衆院選で広島3区から自民党候補を押しのけて、斉藤鉄夫国交相を擁立したかと思えば、次期衆院選では東京選挙区で連立を組む自民党の候補を推さないと宣言するなど、映画「仁義なき戦い」ばりの抗争を繰り広げている。その公明党に、正面から殴り合いを吹っ掛けたのが、日本維新の会だ。
というのも、公明党の現職がいる関西6小選挙区での、候補擁立を決めたからだ。維新の共同代表である吉村洋文大阪府知事が「公明党とも正面からぶつかっていくことが重要」と宣戦布告すれば、公明党側も「ナメるなよ」(兵庫県本部幹部が朝日新聞に対し)とガチンコ応戦。「仁義なき戦い、大阪・兵庫死闘編」が始まろうとしている。
維新はこれまで、大阪都構想実現には公明党の協力が必要だとして、大阪の4選挙区、兵庫の2選挙区の6つ小選挙区で、候補者擁立を見送ってきた。ただ、維新内にはかねてから「公明党は大阪都構想に協力するフリをしているだけ」(府議の一人)と、根深い不信感があった。
4月の統一地方選では、大阪府知事選、大阪市長選の勝利に加え、大阪府議会、大阪市議会で過半数を獲得したことで、公明党の協力なしでも安定した府政、市政を運営することができるようになった。そこで直ちに馬場伸幸代表は、公明党との関係の「リセット」を宣言し、今回の候補者擁立決定となったわけである。
維新前代表の松井一郎前大阪市長が「公明党は強いよ」とツイートするなど、公明党との戦いが容易ではないことは、維新側も重々承知している。とりわけ尼崎市を選挙区とする兵庫8区は、冬柴鉄三元幹事長時代から公明党が議席を死守してきた、全国でも最も公明党が強い選挙区。
公明党内では維新の候補者擁立決定を受けて、与党内でケンカをしている余裕はないとして、戦線を関西に集中しようとする動きも出ている。公明党の支持母体である創価学会は特に関西に強く、「常勝関西」と言われてきた。それだけに、維新、公明両党ともに「絶対に負けられない戦い」となるのだ。