いまだ進まない福島第一原発の廃炉作業。震災から3年半が過ぎた9月には「吉田調書」が公開され、あらためて当時の「戦犯」たちの責任が問われている。11月に公開されるドキュメンタリー映画では、当事者13人を総直撃。今なお自画自賛と責任転嫁を繰り返す政治家たちの見苦しすぎる姿を憤怒公開する!
「原発について何も知らない状態で、いろんな人に手紙を出して撮りました。僕自身は原発に対して推進でも反対でもないので、中立の立場を維持することに注意しました。観てくれた人が、原発の是非について判断できると信じています」
こう語るのは、11月1日から公開される映画「無知の知」でメガホンを執った石田朝也監督である。
この映画は、福島第一原発事故当時の“戦犯”を可能なかぎり総直撃している貴重なドキュメンタリー。石田監督はニュートラルな立場でインタビューを敢行しているのだが、おのおのの証言を合わせると、当事者たちの欺瞞やウソが次々と明るみに出たのだ。
映画は序盤に原発被災地ルポが続いたあと、突如場面が切り替わる。枝野幸男衆議院議員(50)=当時官房長官=が登場し、震災の瞬間を振り返るのだ。
「(官邸の地下にある)危機管理センターに入って、そこからは約1週間くらい官邸の中を行ったり来たりするという状況でした」
注目すべきは事故当時の東京電力「撤退」問題についての発言だ。今年9月、福島第一原発の故吉田昌郎氏(当時所長)による「吉田調書」が公開され、現場が事故作業に関係のない人員を避難させる申し入れをしていたことが明らかになっているが、枝野氏はこう説明するのだ。
「とにかく“誰か”から東電がこんなこと(撤退)を言っている、と。『そんなことされたら大変なことになるんだけど』と、私のところにも連絡があったんです、“向こう”からあった」
最初の「撤退」情報が誰からもたらされたのかは覚えていないようだ。記憶の不確かさを枝野氏も認めている。
「どういう言葉を使ったかは、本当に正直なところ明確に覚えているわけではありませんが、間違いなく覚えているのは『そんなことをしたらコントロールできなくなったら大変なことになるじゃないですか』という趣旨のことを言ったら、“向こう”は答えに窮した」
そもそも「向こう」というのが東電であるのか、官僚であるのかも定かではない。多くのことがあいまいにもかかわらず、枝野氏はこう断言するのだ。
「ということだから、少なくとも本当に犠牲的に象徴的に何人か残るということは語ったのかもしれないけど、少なくともコントロールできないような状況に撤退をするつもりであった、これは“間違いない”です」
撮影当時、吉田調書が非公開とされていたことは強調しておきたい。
この映画には菅直人衆議院議員(67)=当時総理大臣=も登場する。菅氏はまず官僚の責任を訴える。
「(経産省の)責任者が原子力についてなかなかよくわからない(略)事故対応に当たるべき中枢の官僚組織のトップが原子力について、原発事故について、専門的な知識を持っていない人がトップというのは、ちょっと考えられません」
電源喪失した原発と呼応するかのように暴走する菅氏の姿が、周辺の証言からバレていくのだ。