それは死の数日前のことだった。「何もないのに涙が出てくるとか…」と、ryuchellがラジオ番組で明かしていたのだ。
7月12日に東京・渋谷区の所属事務所で、意識のない状態で倒れているryuchellをマネージャーが発見し、その後に死亡が確認された。現場の状況などから警視庁は自殺として捜査を進めているが、「女性ホルモンを打ちすぎたせいではないか」との指摘が出たことには、ラジオ番組でのこの発言が大きく関係しているようである。
岡山大学病院の調査によれば「自分の性別に違和感を抱く」人達の自殺願望はなんと、回答者の68%に達している。自傷行為や自殺未遂の経験者は20%超だ。
もともと自己否定感や自殺願望を抱えている上に、ホルモン治療を始めると精神的に不安定になり、自殺率は高くなるという。都内の女装バーで働く20代の男性が語る。
「以前、ニューハーフバーで働いていた時に、先輩のお姉さんから『女性ホルモンを打つと鬱っぽくなるから、やめたほうがいい』と忠告を受けたことがあります。実際にお姉さんの周囲にも、女性ホルモンを打ってメンタルが不安定になり、自ら死を選んだ人が多くいたそうです。私も女性ホルモン注射を考えたことがあるのですが、それで思いとどまった。そうしたデメリットなどから、最近は『体はなるべく変えない』というトランスジェンダーの若者が増えているように思います」
ひと昔前は、性自認が女性で法律上の性が男性のトランスジェンダーは、女性ホルモンを投与した後に性転換手術を受け、ニューハーフの店などで働くのが一般的だったという。ところが最近は、その働き方が変わってきているようで、
「多様性の時代になったとはいえ、性転換手術を受けたら女性の仕事に就けるのかといわれたら、日本はまだまだなんですよね。就職先不足という面でも、最近は性転換手術を受ける人は減っていると思います。私も含め、男性として就職して、週末だけ女装の店で働く…というケースが多いみたいですね」(前出・女装バーで働く男性)
日本はまだ遅れている、といわれるジェンダー問題。Z世代の若者の代表として、ジェンダー平等を訴えていたryuchellが伝えたかったことではないだろうか。