大阪都構想が再燃している。一度は袂を分かった堺市長選挙で反対派の市長が当選し、トーンダウンするかと思いきや、人気凋落の「維新の会」(以下、維新)の橋下徹市長は強権発動。大阪府議会は大荒れの様相だ。かつて大阪では絶対的な知名度と人気を誇った維新の会も、今や盤石ではないのだ。
在阪の全国紙記者が言う。
「議会が紛糾している直接的な発端は、都構想の制度設計を議論する法定協議会(法定協)にあるんです。『公明党の幹部が口約束を守らない』と言って、橋下徹市長が出直し市長選挙に打って出た。その橋下市長が今年3月に再選を果たすと、信任を得たと言って他の会派も都構想の対案を示さなかったとの理由で法定協のメンバーから排除した。現在は18人全員が維新メンバーで構成されており、野党が口を挟めない状況なのです」
こうした維新の強引な手法を新藤義孝総務相も問題視したが、都構想の設計図となる協定書については「内容を検討したところ、特段の意見はない」とコメント。国がお墨付きを与えたことで、大阪府・市両議会に大阪都構想案を提出する環境が整ったのだ。
だが、現在の維新は議員の流出が相次ぎ、府議会も過半数には満たない。
「大阪維新の会と連携を重ねていた公明党も今や自民党にすり寄り、市議会、府議会ともにオール野党態勢を築いています」(前出・全国紙記者)
「維新の会」所属のさる府議もこう明言する。
「今後、法定協のメンバーを元に戻すこともいちおうは検討するでしょう。ただ、それよりも議案を2度、3度と提出して否決されようとも次の統一選挙で是々非非を問えばいい。こんな声が維新では根強いんです」
当の公明党も「反維新」を掲げているものの、その立場はあやふやだと指摘する議員も少なくない。いったいなぜか。
「自民は維新との過去の遺恨によって、維新の議員の寝返りを虎視眈々と狙っていた。市長選以降は公明党まで協力して実際に7人が他党や無所属に流出。しかし、全ての面で自民と公明が連携するかといえば、そうではない。公明は統一選の結果いかんで勝ち馬に乗るとも噂されている」(在阪の別の全国紙記者)
つまり来年3月の統一地方選まで、議会の混迷は強まるばかりと言えそうだ。
一方、公明党とは完全決別したはずの維新にもその配慮があるという。現に公明党の一人区には候補者を今も立てていないからだ。
「9月11日の大阪維新の会懇親会で第一次公認候補者を発表しましたが、公明と全面対決となる選挙区には候補者がいなかった。維新の支持者は減っても増えることがないとも言われ、府議会でも過半数に届かないとの意見が大多数。公明は都構想賛成の立場なので、こうした憶測を加速させている」(前出・維新府議)
現時点の票読みは目標45議席。予想となると36~37議席というのだが‥‥。
「最悪な結果は10台後半だ」(維新の会の別の市議)
さらに追い打ちをかけるのが、有権者離れだ。毎週土日に維新が開催するタウンミーティングでは都構想については解説しているものの、参加する支持者たちの多くは中高年層。
「今では橋下代表が朝日新聞の大批判をする時にだけ、わずかばかり盛り上がる程度。維新の話題性と浮動票を一気に集めるため、大阪市長選と府知事選挙のW選挙を統一選に当てるしか方法がない」(維新関係者)
地元大阪でも地盤沈下が著しい維新の会。起死回生の策は、今のところ「朝日叩き」だけということのようだ。