巨人が球団を挙げて、3番打者として覚醒しつつある秋広優人の新人王獲得を、猛プッシュしている。
秋広は7月23日のDeNA戦(横浜)で、松井秀喜氏も達成できなかった、球団史上初の高卒3年目以内での4戦連発となる10号ソロを放った。試合終了時点で規定打席にこそ到達していないが、67試合に出場して打率3割、28打点とブレイクの予感を漂わせている。
この活躍で、阪神・村上頌樹の独走状態と思われていたセ・リーグの新人王レースが、にわかに騒がしくなってきた。スポーツ紙プロ野球担当デスクが言う。
「一時は関東でも、新人王は村上で決まりといわれていましたが、ここにきて勝ち星が6勝と伸びていない。負け数も5に増えています。防御率は現在、セ・リーグ2位ですが、これは大量失点すればすぐに跳ね上がる。秋広が活躍していることで、分からなくなってきましたね」
新人王は、前年までの1軍出場経験などを元にした有資格選手を対象に、全国の新聞、通信、放送各社に所属する、プロ野球を5年以上担当する記者による投票で選ばれる。そのため、大量の記者が所属する在京選手が有利とされてきた。特に関連企業に日本テレビや読売新聞、報知新聞などを抱える巨人の選手に票が集まりやすく、過去、巨人の新人王受賞者は12球団最多の20人を数える。
今季はその大票田を持つ巨人関連企業が、秋広一本化に向けて、動き始めている。ベテラン遊軍記者によると、そこには切実な球団事情もあるのだという。
「とにかく巨人としては、生え抜きのスター選手を作りたい。故障の多い菅野智之や、スキャンダルまみれの坂本勇人ではもう、客を呼べないですからね。秋広への期待は並々ならぬものがあります」
秋広がもし新人王に輝けば、巨人史上初というキャッチコピーもできる。前出のスポーツ紙デスクは、
「巨人の野手で新人王になったのは、長嶋さんや原辰徳監督など、わずか6人。その全てが大学か社会人経験者で、高卒選手はいません。秋広が新人王になれば、巨人初の高卒新人王となる。松井氏でもできなかった快挙です。球団が必死になるのも無理はないのです」
シーズンが押し迫れば球団側からマスコミ各社に、選挙戦終盤のような「熱烈なお願い」が予想される。成り行きが注目されるところだ。
(阿部勝彦)