広島サミットの開催でわずかに上向いたものの、後手後手に回るマイナ問題もあって下げ止まらない内閣支持率。焦りを隠せない岸田総理は、起死回生となる支持率UPの「秘策」を打とうとしている。国民の目には風前の灯に映る岸田政権が打って出る、乾坤一擲の大勝負に成算はあるのか。
共同通信が行った7月の世論調査によれば、現在の内閣支持率はなんと34.3%。発足以来でも極めて低水準の結果に終わった。その他メディアの調査でも同様に不支持率が支持率を上回っており、岸田文雄総理(65)にとっては、連日の猛暑よりも体にこたえたに違いない。
「支持率低下について『上がったり下がったりするもの、いつかは上がる』と強気の姿勢を見せているが、6月の衆院解散総選挙を見送った岸田総理に対し、与党内からも『弱腰の、解散やるやる詐欺だ。このまま9月まで解散を引っ張ったとしても、国民の信用を取り戻せるのか?』と疑問の声が上がっている。何か手を打つ必要性を、総理本人が一番感じてあがいている」(永田町関係者)
そこで四面楚歌の窮余の策として絞り出したのが、「旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への解散命令請求」と、「電撃北朝鮮訪問」という2つのウルトラCだという。
確かにこの2つを実現させれば、支持率は一転して回復へ向かうだろう。とはいえ、自民党には旧統一教会との関係が深かった議員が要職に就いたり、選挙に向けて党の公認を受けられる旧態依然とした「体質」が色濃く残っている。
また、就任以後の岸田総理に、拉致問題に積極的なイメージがなかったことも事実だ。それぞれ実現に向けて、総理の本気度はいかがなものか。
「岸田総理は、凶弾に斃たおれた当選同期の故・安倍晋三元総理を強烈に意識しています。通算・連続ともに在職日数歴代最長の安倍政権を超える長期政権を目指していることは、党内でも有名な話。今の岸田総理は、完全にケツに火がついた状況。政権維持のために手段を選ぶ、という悠長な考えはなく、支持率回復のためなら、使える奥の手は何でも使う」(自民党関係者)
その第1弾として控えるのが、先述した旧統一教会への強硬措置である。
昨年7月8日、教団の宗教2世・山上徹也による安倍元総理銃殺事件が発生し、旧統一教会が抱える闇が一気に社会問題化した。
国民の旧統一教会に対する批判が日に日に高まる中、岸田総理は昨年10月17日に宗教法人法に基づく「報告徴収」と「質問権」を活用した教団の調査実施を表明。翌18日には参院予算委員会でも、宗教法人への解散命令請求が認められる法令違反について、それまでの「刑法違反に限る」という認識を翻し、「民法の不法行為も入りうる」と答弁していた。
旧統一教会と政界の癒着について取材を続け、著書『「山上徹也」とは何者だったのか』(講談社)を上梓したばかりの鈴木エイト氏が語る。
「自民党内で旧統一教会と接点を持っていた議員は約180人いましたが、岸田総理本人は関係がないことを明言していて、問題に大ナタを振るえる立場にあります。答弁も、解散命令請求へのハードルを下げるもので、その後も教団の実態調査を継続させてきました」
7月21日には、文化庁が7回目の質問権行使を予定していることを発表。一部報道では、「調査が長期化する一方で、それに見合う成果が得られていないのではないか」という批判も見られるが、鈴木氏はこれに異を唱える。
「教団側がみずからの悪質性を認める証拠を積極的に提出するわけはなく、回答資料が回を追うごとに減っていることを理由に批判することは的外れです。それに質問と回答のやり取り以外にも、文化庁は独自に調査を進めています。私が取材した限りでは、準備はすでにほぼ整っていて、早ければ8月、もしくは9月には解散命令請求を出せる段階にあるはず。あとはそのタイミングを見計らっているだけだと思います」