ソフトバンクがオールスターを挟んで54年ぶりの12連敗を喫した。まったく同じタイミングで日本ハムも13連敗。こちらは選手層が薄いので仕方ないところがあるが、ソフトバンクは言い訳できない。オフに近藤、オスナら大型補強を敢行し、3軍どころか4軍まで抱えている。巨大戦力に余裕をかましていたわけやないやろうけど、誰かがやってくれるという感じで、個々の危機感が足りなかったのかもしれん。
特に悲惨やったのが12連敗となった7月24日のロッテ戦。1点リードの9回に2死一塁からオスナが代打・角中に逆転サヨナラ2ランを浴びた。王会長がわざわざZOZOマリンに足を運んで、チームを鼓舞。絶対的な抑えのエースがあと一人にこぎつけ誰もが連敗が止まったと思っていた。試合後の王会長が「理屈じゃない。これが勝負だよ」とコメントを残していたけど、ほんまに勝負ごとは最後まで何が起こるかわからない。
翌日の25日は泣きっ面に蜂となるオリックスの山本由伸の先発。ところが、ここで連敗をストップするんやから勝負はやってみないとわからない。1‒0の8回に貴重な2点二塁打を放った柳田は感情あらわに両手を天に突き上げていた。確かに連敗中はあと1点が取れずに逆転負けするケースが多かった。
リーグの打率ベストテンにソフトバンクは柳田、近藤、中村晃、牧原大と4人も名前を連ねていながら不思議なぐらいに点が入らない。大量得点でいちばん多いケースは下位打線でチャンスを作り、上位打線に回すことやけど、なかなかそうならない。WBC日本代表に選ばれた甲斐も打率2割がやっと。三塁の栗原も2割5分を切っているようではつらい。亡くなった門田博光がよく言っていた。「ボール球さえ振らなかったら、誰でも2割5分は打てる」と。ほんまにその通り。甲斐は強く振るだけでボールの見極めが悪い。ヒットを打てなくてもファウルで粘るとか、ボールを振らずに球数を投げさせる。そういうしぶとさがボディブローのように相手投手に効いてくるんやから。
ソフトバンクが12連敗した上に、2位のロッテはエースの佐々木朗希が脇腹を痛めて今シーズンの復帰が厳しくなった。これで3連覇を狙うオリックスはかなり楽な状況になった。山本、宮城、山下ら先発陣が安定しているから大型連敗の心配は少ない。早々とペナントレースの灯を消さないためには、やはりソフトバンクがカギを握る。あれだけ連敗してもまだ貯金もある。やっぱり意地を見せないとアカン。
昔から優勝争いの本当の勝負は8、9月とよく言われていた。ソフトバンクは12連敗を止めた翌日にオリックスの左のエース・宮城も攻略して、連勝を飾った。もともとそれぐらいの力があるんやから、最後まであきらめたらアカン。藤本監督も選手任せにするのではなく、もっと采配で動かしていくべき。監督の力量は流れが悪い時にどう変えるかやから。
7月18日には僕も昔から応援していた元阪神・横田慎太郎さんが28歳の若さで脳腫瘍のため亡くなった。ほんまに野球の好きな素直な子やった。横田のことを思ったら、連敗や不振のきつさぐらいはどうってことない。健康で野球をやれていることに喜びを感じて、ファンの喜ぶプレーを見せてほしい。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。