阪神に続き、巨人の沖縄キャンプも現地で取材してきました。巨人で目立っていたのは、熱男こと松田宣浩。グラウンドで大きな声が出ているので、どこにおるかがすぐにわかる。ソフトバンクを昨季限りで自由契約となり、巨人でもう一花咲かせようと燃えに燃えている。昔から応援している選手。直接、話を聞くと、相変わらず元気いっぱいで「今年が勝負です!」と若手のようにキラキラと目を輝かせていた。
原監督の松田に対する期待は大きなものがあった。あの明るさは、ベンチのムードメーカーになる。巨人の選手はどちらかと言えばおとなしい選手が多いからね。戦力としてもまだまだやれる。練習を見ていると足と肩はそんなに落ちていない。バッティングもいい感じで打っていた。本人によると、バットの出をよくするために、左足を開くオープンな構えに変えたという。ベテランになっても探究心が旺盛。三塁だけでなく、外野に一塁、二塁も守る姿勢を見せている。松田が復活すると、巨人にとっては儲けものの大きな戦力になる。
僕は昨季、ソフトバンクがオリックスとの最終戦までもつれた優勝争いと、クライマックスの最終ステージで敗れたのは、松田がいなかったのが響いたと思っている。球団から構想外を伝えられて、優勝争いの佳境の9月末に退団会見を開いた。何度も修羅場をくぐってきた男。その声は試合に出ていなくとも、大一番でナインに勇気を与えたと思うだけに、残念な去り際やった。
巨人では松田だけでなく、長野、坂本の状態のよさも目についた。広島から5年ぶりに復帰した長野もまだ38歳。もともとの技術は高いんやから、こちらも復活する可能性は十分にある。バッティングを見ていると「さすがやな~」と見とれるほどのいいスイングをしていた。松田、長野に比べると、坂本の34歳なんて、まだまだ老け込む年やない。打っている姿、守っている姿、走っている姿で、遠くから見ていても、すぐに坂本とわかる。ほんまに華がある選手や。
今年の巨人は戦力的に厳しいかなと思っていたが、実際にキャンプを取材してみると、野手の層は意外と厚いと感じた。控えキャッチャーで26歳の岸田行倫にも「こんないいバッティングできるのか」と驚かされた。肩はWBC日本代表に選ばれた大城より上やし、打つほうでアピールに成功すればレギュラーをつかんでもおかしくない。
若手もイキのいい選手がたくさんいる。新人ではドラフト2位の外野手・萩尾匡也、ドラフト4位の遊撃手・門脇誠が期待されていた。ただ、残念やったのは、練習を見ていても誰なのかわからないことがあったこと。ユニホームでなく、黒いTシャツのようなものを着ていた。スタンドで見ていたファンも誰かわからなかったのと違うかな。背番号は選手にとって顔と一緒。プロは顔を覚えてもらうのも仕事の一つや。最後までしっかりユニホームを着て練習してほしかった。
それにしても原辰徳監督はいつまでも若々しいし、昔から礼儀正しい。久々に会えたので、亡くなった門田博光や村田兆治らの昔話もしてきました。今年は阪神の監督に岡田監督が復帰したし、百戦錬磨のベンチ同士の対決も楽しみ。やっぱり、何やかんや言うても巨人が弱いと野球が盛り上がらないからね。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。