日本大学アメリカンフットボール部に朝日大学ラグビー部、東京農大ボクシング部…大学スポーツの大麻汚染が止まらない。しかも日大アメフト部に至っては、選手寮から覚醒剤成分まで出てきた。
大麻は判断力が低下し、精神疾患や記憶障害を引き起こす。記憶障害といっても、記憶喪失のような類ではない。食事と害虫の記憶が錯綜し、白米の上に害虫がうごめく、手や足を虫が這うといった、壮絶な幻覚をもたらすのだ。
今回の薬物汚染は「若者の好奇心」や「出来心」では済まされない。なにしろ大麻を使用しているのはいずれも、相手選手と激しくコンタクトする競技の選手。大麻使用で判断力が落ちた結果、危険な行為に及んで相手の大学生に大ケガを負わせ、あるいは死亡させる恐れもあるからだ。
ご存知の通り、日大は5年前に悪質タックル問題を引き起こしている。将来を嘱望されていながら、日大の選手に危険なタックルを受けて負傷した関西学院大学の奥野耕世選手は、大学卒業とともにアメフト選手からの引退を余儀なくされた。
その後、奥野選手は在阪テレビ局に就職。Xリーグ2部西地区のホークアイでアメフト復帰を果たしているが、小学1年生の頃から抱いていた社会人アメフト選手になる奥野選手の夢は、一度は絶たれた。
それでも今年4月22日、危険タックル以来5年ぶりとなった、関学と日大の交流戦が行われたばかり。その交流戦に大麻や覚醒剤を使った選手が紛れていたとしたら…。日大アメフト部は何も反省しておらず、他大学選手への最低限の礼儀も社会通念も、完全に失している。日大OBが不信感をあらわにして言う。
「どんな伝統、実績があろうと、日大アメフト部の不祥事は数えきれない。すぐにでも廃部にしてほしい。林真理子理事長の『学生を信じる』という考えの甘さにも、卒業生や現役学生の保護者からは、怒りと不満が爆発寸前です」
大学スポーツは、相手があってこそ。他大学の学生に実害が及ぶことのないよう、日大も朝日大も東京農大も、体育会の対外試合を1年間自粛して全学生への血液検査を実施するくらい、徹底的な調査をすべきだろう。
過去、大学ラグビーの対外時代で頚椎損傷事故が起きたのをきっかけに、日大医学部は学生スポーツへのスポーツドクター派遣というボランティア活動を続けてきた。そんな日大OB有志のボランティア活動すら、アメフト部のたび重なる不祥事で霞んでしまう。
かつてタモリは「笑っていいとも」のテレフォンショッキングで「医学部と芸術学部は日本大学じゃあない」と日芸出身のゲストに語ったことがあるが、アメフト部もまた、日大にあらず、なのである。
(那須優子/医療ジャーナリスト)