日本大学と世間の認識がズレまくっている。アメフト部の選手寮で大麻と覚醒剤が見つかり、部員が逮捕された事件。日大は8月10日に、アメフト部の無期限活動停止処分をわずか5日で解除したが、同じ日に関東学生アメリカンフットボール連盟(広田慶理事長)は臨時理事会で「日本大学は当面の出場資格停止」を決めた。
連盟の処分理由は、筋が通っている。日大からリーグ戦参加の意向が伝えられたものの、全部員と関係者が違法薬物に対して潔白であるという証拠も再発防止策も示されなかった、というのだ。
このため連盟は、再発防止策や関係者の責任の所在が示されず「連帯責任以前の問題」として出場資格停止を決めた。
5年前の関西学院大選手への危険なタックルに続き、今回は合宿所内での大麻と覚醒剤所持。覚醒剤中毒の選手が再び危険タックルにでも及べば、対戦相手の学生が大ケガあるいは命の危険に晒される可能性もある。アメフトの本場アメリカでは毎年10人以上、高校、大学のアメフト選手が四肢麻痺、あるいは頚椎骨折で即死している。それほど激しくコンタクトする競技だから、連盟は学生を守るために当然の対応をとったにすぎない。
腑に落ちないのは「日大がいまだにアメフト部関係者の尿検査や毛髪検査をしない」ことだ。
大麻は血液検査なら使用後3日以内、尿検査なら1週間以内でないと大麻成分が検出されない、と一般的には言われている。ただし常習者の場合、3カ月間は尿や毛髪から大麻成分を検出することが可能だ。
8月8日の大学の会見でパケ、カスなど「隠語」「犯罪用語」を連呼していた元検事の沢田康広副学長なら「どれくらいの期間をおけば、尿や毛髪から大麻成分が検出されなくなるか」よくご存知のことだろう。
日大がアメフト部合宿所で大麻片を発見したのは7月6日、警察に連絡したのは18日だという。12日間の空白は何を意味するのか。少なくとも日大の連絡が遅かったため、警視庁が逮捕者以外の部員に任意で尿検査を求めるタイミングは逸してしまった。
それでも林真理子理事長が大学執行部に全アメフト部員の毛髪検査を命じ、記者会見の際に全部員の潔白を証明することはできた。ところが日大は部員からの事情聴取のみ。会見で全部員の尿検査結果、毛髪検査結果を出すことはなかった。
6月末から7月上旬まで、合宿所で大麻が使用されていたなら、尿検査や毛髪検査のタイムリミットは8月下旬となる。もし大学執行部とアメフト部、保護者…大学ぐるみで「尿検査、毛髪検査に引っかからないための時間稼ぎ」をしているとしたら…。林理事長は理事長職だけでなく、作家としての資質も問われることになる。
(那須優子/医療ジャーナリスト)