「遺書はありました。そこには『ヒーチャン大好き』とか、私の生活の心配や絶対に不幸にしないからと書いてあるんですけど‥‥。勝手に死んじゃって置いて行かれて。竜ちゃんがいない世の中はつまらないんです」
夫・上島竜兵への思いをこう吐露するのは、27年間連れ添った妻で、タレントの広川ひかる夫人(52)である。
「ヤー!!」「聞いてないよ〜」「くるりんぱ」など数々のギャグでお茶の間を笑わせてきた、ダチョウ倶楽部の上島が61歳の若さで急逝してから早1年が過ぎた。
先輩、後輩芸人に広く愛された男はなぜみずから命を絶つ選択をしたのか。真相が謎に包まれる中、夫人の広川は上島光名で「竜ちゃんのばかやろう」(KADOKAWA)を8月10日に刊行。夫婦生活から別れの日までを、赤裸々にありのままの事実を綴り、大反響を呼んでいる。
「今まで飲み歩いて家に寄りつかなかった人がコロナ禍になって、飲みに行けないのは『本当につらい』と漏らすこともあったんです。そんな中、〝人生の師匠〟と慕っていた志村けんさん(享年70)がコロナ感染に伴う肺炎で亡くなってしまった。ショックは計り知れないものがあったようで、一生懸命、心に折り合いをつけようとしていたんですけど、整理できなかったのかなって。(上島が)亡くなる直前に様子がちょっと不安定なことにも気づいていたのに、嫌がる本人を無理してでもなぜ病院に連れていかなかったのか、今でも後悔が押し寄せてきます」
突然の別れが訪れると、生前、死生観を語ることもあった上島は、メンバーの肥後克広(60)らに明るい葬儀を希望していたこともあり、泣き笑いに包まれる密葬となった。
「肥後さんは頬かむりして竜兵会の仲間と棺を落とし、リアクションがなくて本当に亡くなったんだなというシナリオを考えていましたが、さすがにそこまでは‥‥。でも、ネタでお馴染みのおでんは棺に入れました。私も挨拶の時に竜ちゃんが映画『男はつらいよ』シリーズが好きだったので、最後にうまいこと言おうと『竜ちゃんは寅さんが好きで』と話をするはずが、『寅さんが亡くなって、あっ竜ちゃんだ』とごっちゃになっちゃって。そしたらしんみりした空気が一転、爆笑が起きたんです。笑いの基本は緊張と緩和で、緩急が必要だと聞かされていたので、このことかと実感しました」
葬儀が終わり、遺品の整理など多忙な日々に追われる中、1カ月が過ぎたあたりで夫人は体調不良に襲われる。風呂場でしこりがあることに気づき、病院で受診した結果、乳がんだった。
「普段から食べ物に気をつけて、添加物をあまりとらないように体調管理していたのに、バカバカしくなりました。幸いステージ1だったので、手術や放射線治療を終えて今は落ち着いているところです。ただ、竜ちゃんが亡くなった衝撃の方が強すぎて、過ぎてみれば病気は大したことではなかったように思います」