バスケットボール男子W杯で8月29日、日本(世界ランク36位)は南半球で唯一、世界ランクトップ10に入っているオーストラリア(同3位)と対戦する。
最大18点差をつけられたフィンランド戦(27日)で逆転劇を演じたトム・ホーバス監督(56)もこの試合に向けて「勝ちたい、勝ちたいです!」と気合を入れていた。
W杯での日本の勝利は2006年(パナマ戦)以来、17年ぶりのことで、長く低迷が続いたバスケ日本代表に「夜明け」が見えた。
ホーバス氏のモットーは「選手を信じること」。現役時代は元NBAのキャリアはあるものの、決して上から目線ではない。東京五輪では女子日本代表を指揮して史上初の銀メダルを奪取した。バスケットボール協会はその女子の快挙の翌日に男子監督をオファー。ホーバス氏はその際、「勝てると思わなかったら他のオファーを受けていた」と話している。
1990年の23歳で初来日したホーバス氏は、トヨタ自動車のバスケットボール部(現アルバルク東京)と、あえてプロ契約ではなく社員選手として契約。サラリーマン生活を過ごしている。朝7時半に社員寮を出て通勤電車に乗って出社する日々を送り、東京本社で「海外マーケティング部」に所属していた。トヨタ自動車関係者によれば、
「トヨタにいた4年間は日本人の考え方や文化に親しむ期間だったようです。周囲がバスケの練習に行けばと言っても、真面目に仕事をやっていましたよ」
そのため今回、女子代表監督の時と同じく通訳をつけず日本語はペラペラなのだが、2000年に日本で現役引退をした翌年には「FBI(アメリカ連邦捜査局)」への入局に挑戦した経験も持つ。しかし翌年の「9.11」でその採用が無期延期になったところへ、日本の女子実業団コーチのオファーがあり「日本への恩返し」を念頭に今に至っている。
女子で五輪銀メダルに加え男子W杯での快進撃と、世界でも男女代表監督としてこれだけ結果を出しているのはホーバス氏ぐらいだろう。今回の目標はW杯でアジア1位となって、来年のパリ五輪の出場権を獲得すること。家族全員を米・サンディエゴに残したホーバス氏の「単身赴任」での挑戦でもある。