日本の歴史的1勝が空気を変えるか。
バスケットボールW杯が開幕したというのに、どうにも盛り上がらない。チケット完売と発表されていながら、開幕してみれば、会場の沖縄アリーナの日本側観客席はスッカスカだ。
8月25日のドイツ戦後、日本代表のトム・ホーバス監督は次のように言って、不満をあらわにした。
「ホームアドバンテージは作ってくれたが、最高とは言えない。満席じゃない。うちのベンチの前に誰もいない。なんで?」
渡邊雄太までも、大会中というのに自身のX(旧Twitter)を更新して、疑義を呈する。
〈昨日の試合チケットは完売で、チケット欲しくても手に入らなかったって人たくさんいるって聞いてるのに、ベンチ前の席ガラガラだったの意味がわからなすぎる。大人の事情らしいけど、来ない人にチケット配るなら、ほんとに来たい人に売ってあげるべきでしょ〉
プレーに集中すべき選手が会場の写真をアップし、抗議しなければならない異例の事態になっている。
国際バスケットボール連盟(FIBA)は8月27日以降の試合チケットを、公式サイトで追加販売。同日夜の日本×フィンランド戦では、日本ベンチ前が日本人サポーターで埋められた。
サポーターの応援が日本代表を鼓舞させたのか、日本(世界ランク36位)はフィンランド(同24位)に第4クオーターで逆転。98-88で歴史的勝利を収めた。ワールドカップでの日本の勝利は初、前身の国際大会を含めても、17年ぶりの快挙だ。
それでもFIBAと日本バスケットボール協会は、興行を成功させるつもりがないのか。なにしろバスケットボールを扱った映画「スラムダンク」は昨年末に封切られたものの、いまだ勢いは衰えず、興行収入は150億円を突破。オープニングに登場する神奈川県鎌倉市の「江ノ電・鎌倉高校前」には外国人観光客が殺到し、地元住民の生活に支障が出ているほどだ。
対してW杯の観客数は、日本×ドイツ戦が6397人、チケットを追加販売した日本×フィンランド戦でも7374人にとどまった。W杯は日本とフィリピン、ドイツで同時開催されているが、フィリピンの会場は連日、大賑わいだ。フィリピン代表が出場した8月25日の入場者は3万8115人。W杯の観客動員数として、歴代最多記録を更新した。
日本の会場はマックスで1万人しか入らない、沖縄アリーナ。日本代表が「明日、体が動かなくなってもいい」と死闘を繰り広げているのに、あまりにキャパシティーが小さすぎる。
日本もフィリピンなみに大きいアリーナで開催していれば、より多くの人が日本代表の歴史的1勝の喜びを分かち合うことができただろう。売れ残りが心配だというなら「スラムダンクの聖地」神奈川の会場を押さえればよかった。
さらにスラムダンク作者の井上雄彦氏にW杯グッズの描き下ろしでも依頼すれば、バスケットボールファンだけでなく、国内外のアニメファンが殺到する。
日本代表の歴史的勝利でこれからW杯が盛り上がったとしても、沖縄アリーナはあまりに小さく、遠すぎるのだ。