発売するや即完売し、ネットで転売が横行するも定価の1500倍もの破格の高値が付いた。大人気ユーチューバーが監修した「幻のカップラーメン」を巡り侃々諤々(かんがくがく)、賛否両論が飛び交っているのである。
〈初めて活動お休みさせていただきます〉
4月21日、自身のユーチューブチャンネルでこんなタイトルを記載して動画をアップしたのは、登録者数1160万人を誇るユーチューバー・HIKAKIN(34)だった。後日、その間に「みそきん」なる味噌味のカップラーメンの開発に携わっていたことを明らかにしたことで、その発表は注目を集めた。かくて5月9日の発売日には飛ぶように売れたという。
「セブン─イレブン限定商品だったため、コンビニでは異例となる20〜30人の購入希望者が行列を作るという事態となった。他の店舗でも、即日完売したと聞いています」(都内某所のセブン─イレブンのアルバイト店員)
熱烈なラブコールに応えて8月10日に再販したが、またしても一瞬で売り切れ。この爆売れについてセブン&アイ・ホールディングスの広報担当者は「当社の予想以上に多くのお客様にご好評いただきました」と回答し、うれしさが隠せない様子だ。
その反面、あまりの入手困難ぶりにイラ立ちを隠せない、購入希望者によるトラブルが各地で相次ぐことに。
X(旧Twitter)ではトンデモ動画が拡散。みそきんを購入できないことに、女性客の怒りが爆発し、応対したセブン─イレブンの店員に対して「睨みつけてきましたよね? 警察、呼びます」と難癖をつけ、さらには販売開始時間の記載がないことを理由に「時間を書いていないじゃないですか!?」と怒号を浴びせる一幕もあった。
ラーメン評論家の大和イチロウ氏も、実際にコンビニでトラブルを目撃したと証言する。
「数人が『みそきん、入荷しているんでしょ?』と店員さんに詰め寄っていました。店員さんが『販売時期は言われていないので‥‥』と困惑しながら説明しても『いつもなら、新商品はこのタイミングで並んでいるでしょ!』と怒鳴りつけていたんです」
お湯を注いで3分もすれば食べられる商品よろしく、長時間も待たされることは心外というわけか。いずれにせよ、群衆の心を乱すほど、購買意欲をかき立ててしまったみそきん。ネット上のフリマサービスを運営している「メルカリ」では、定価300円の代物が1個45万円という法外な値段で転売される事態にまで発展。果たして、それほど価値のあるお宝ラーメンなのだろうか─。
みそきんを実食した、インスタント麺愛好家の大山即席斎氏はこう冷静に評して、
「普通においしい味噌ラーメンでしたが、事前の期待が大きすぎましたね。白味噌に多少のこだわりとのことですが、これまでの味噌ラーメンと違いがないのは残念でした。通常の味噌ラーメンが定価250円程度なのに対して、みそきんは300円。ならば、希少価値のある珍しい味噌を使うなり、他では味わえないこだわりの肉を入れるなりしないと割高に感じます」
カップ麺業界では、50円差で商品クオリティーの期待値が大きく変動するようだ。一方、先の大和氏は、商品の製造元である「日清食品」のチャレンジ精神に太鼓判を押す。
「口当たりのいい白味噌とニンニクの風味のバランスがいいラーメンに仕上がっている。ちょうどいい塩味感で、ちゃんと味噌の奥にあるコクを余韻として残していますよ」