ところで、専門家による高評価も得たみそきんだが、ネット上では、その味は新潟にあるラーメンの名店「食堂ミサ」と類似しているという意見が多く見られる。HIKAKINは新潟出身で、まさに同店のラーメンが好きだと公言していた過去もある。うがった見方をすれば、好きな店の味を無断拝借してきたとも考えられるのだが‥‥。
ミサのラーメンも食べたことがある、大和氏が言う。
「ミサの味噌ラーメンに近いですが、まったくのコピー商品ではない。みそきんはニンニクの香りを抑えた優しい味ですからね。ティーンエイジャーに向けた大衆向け商品になっています」
確かに、HIKAKINの支持者の多くは子供たちだ。そんなメインターゲット層に向けた商品にもかかわらず、先にも触れたように買い占めによって価格高騰が起きている現状をどう見ているのか。
「大量購入して転売している大人がいることは、HIKAKINさんも日清食品さんも残念だったでしょうね。カップ麺業界に限らず、食品メーカーは転売されることを嫌がっています。大衆に平等に食べていただきたいと思って作っているのに、一部の人しか食べられなくなるのは本当に残念なことです」(大和氏)
それにしても、事前に対策を講じることができたはずである。大山氏も疑問視する。
「(ここまで売れることが不確定だった)初回販売はしょうがないですが、再販時には適切な買い占め防止や転売対策ができたはずでしょう。しかし再販の際も品数が少なく、1時間おきに店舗をのぞいても棚に置いてあることはなく、一晩寝てから訪ねると完売。1日2日で売り切れる量しか出していませんでした」
いっそ大量に作ってしまえば、買い占め、転売も防げたように思える。しかし、それは難しいと大和氏が解説する。
「セブン─イレブンは全国に2万1420店舗あります。仮に各店舗に新商品のカップ麺1ケース12個入りを平均3ケース卸すとなると、6万4260ケース(77万1120食)となります。これだけの数のカップラーメンを作るとなると、海外から原材料を揃えるのにも相当な時間がかかります。ごく短期間で今夏に再販できたのは、ほぼ奇跡のレベルでした。再々販があったとしても、かなり先かと思われます」
再々販は現時点で未定のようだが、待っている消費者がいる限り、その飢餓感は続いていく。このプレミア感を植え付けた販売戦略は「日清食品の横綱相撲だった」とITジャーナリストの井上トシユキ氏は成功の秘訣を語る。
「バズりやすい限定商品を、若い人がよく利用するコンビニ限定で販売したというのは、負けの確率が非常に低い勝負でした。HIKAKINが有名だったからというよりは、これまでカップラーメンを牛乳で作ったり、ちょい足ししたりの動画で話題を呼んできた彼とのタッグだったからこそ、好意的に受け入れられたのでしょう」
味はもちろん、転売対策もアップデートした第2弾に期待したい。