莫大な予算を投入し、7月期民放ドラマで視聴率トップを快走している日曜劇場「VIVANT」(TBS系)。豪華俳優陣の中で異彩を放っているのは、公安部のエージェントとして野崎守(阿部寛)を支える富栄ドラムだ。
言葉を発することができず、スマホの音声翻訳を駆使してコミュニケーションを取るという特異なキャラクターを演じる富栄は、その独特な風貌から番組当初、モンゴル人と勘違いされることが多かった。実はれっきとした日本人で、しかもバリバリの関西人。俳優を始める前は大相撲の力士だったという。
「1992年に兵庫県で生まれ、中学3年生の時に未経験ながら神戸市の大会で優勝。伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)にスカウトされて入門。約13年の力士生活で、最高位は幕下6枚目。関取になる十両まであと一歩の位置までいきました。のちに大関となった貴景勝に初黒星をつけたのが富栄でした。ケガのため、2021年3月場所限りで引退。その後はYouTuberに転身し、俳優業も開始しました。Netflixで話題になった大相撲ドラマ『サンクチュアリ-聖域-』にも出演しています」(相撲ライター)
現役時代は同じ部屋の横綱だった日馬富士や照ノ富士の付け人もしており、巡業の土俵ではバック転やラップを披露するなど、明るい性格で周囲に愛されていたという。
そんな富栄が引退の少し前、照ノ富士を激怒させた事件がある。
2020年7月場所、ケガで長期間休場していた照ノ富士が序二段から復活し、幕内に戻った。ここで5年ぶりの幕内優勝を遂げた場所後のことである。
都内スタジオで優勝額の撮影をした際、付け人の富栄は照ノ富士が締める予定のものとは別の化粧まわしを持ってきたのだ。
「化粧まわしは後援者から贈られるもの。横綱ともなれば、多くの後援者から様々な化粧まわしを贈られている。どの化粧まわしを締めるかは、後援者との良好な関係を維持するためにも気を遣う部分ですからね。間違えた富栄は当然、横綱に厳しく叱られ、正しい化粧まわしを部屋まで取りに行かされたそうです」(前出・相撲ライター)
そんなおっちょこちょいな部分もある富栄だが、現在は力士時代のケガの影響で、杖をついて歩いており、10月に手術を受ける予定だという。
持ち前の身体能力を生かした演技で活躍するのを見守りたい。
(石見剣)