予想通りというべきか、はたまた衝撃の展開か。
TBS日曜劇場「VIVANT」は、主演の堺雅人が視聴者と同僚の「裏をかきつづけて」いるが、最も気になるのは、ストーリーよりも「残り3話で終わるのか」だろう。
「VIVANT」には原作がない。「半沢直樹」や「下町ロケット」といった日曜劇場のヒット作を手がけた福沢克雄氏の演出で、これまで福沢作品の脚本を担当してきた4人の脚本家が書き下ろす、オリジナルストーリー。過去の「池井戸潤原作シリーズ」のように、ストーリー全体のボリュームがつかめない。
まだ登場人物の相関図も完成していないのに、「7回」まで放送が終わってしまった。物語を左右するであろう最重要人物を演じる役所広司の長ゼリフもまだ聞いていない。ストーリーの着地点が全く読めないのだ。
気になるのは今年上半期、実写邦画としては1位の興行収入約45億円、340万人の観客を動員した劇場版「TOKYO MER~走る緊急救命室~」の成功だ。これは鈴木亮平主演の救命救急チームの活躍と政治家の暗躍を描いた医療ドラマで、2021年7月期にTBS日曜劇場で放映されていた。地上波ドラマのクライマックスで終了し、「続きは劇場で」と引き延ばす。ライバル局のフジテレビが得意とする「ドラマ映画化」の手法に、映画館での視聴が「映える」パニック映画の要素を取り入れて大成功した。映画関係者が言う。
「TBS日曜劇場では、過去に小松左京の原作で1973年に大ヒットした『日本沈没』のリメイクを放送しましたが、邦画版と比べられて酷評された。そのリベンジとも言えるのが『劇場版TOKYO MER』でした。『VIVANT』も堺や阿部寛、役所など、過去の日曜ドラマ主演級の俳優が競演し、そのギャラは破格だそうです。さらに制作費用はモンゴルでの派手なカーアクションなど、1話あたり1億円と言われている。放送開始直後、そのスケール感の大きさに驚かされたと同時に、地上波とネット配信だけで元は取れるのかと疑問視されていましたが、映画化を前提としているなら納得です」
この後、畳みかけるような展開で、残り3話で終わるのか。あるいは年末までの2クール放送か、「続きは映画館で見てね」の手法なのか。
8月30日には、オリジナルストーリーをノベライズした単行本の前巻が発売された。これがどこまで描かれているかで、主人公が彷徨う砂漠や草原同様、ラストまでの遠い道のりを推し量ることはできるだろう。