今季ドラマの中で高視聴率をキープする日曜劇場「VIVANT」(TBS系)。いよいよ終盤に向けて、テロ組織「テント」と外事警察、そして陸上自衛隊の秘密部隊「別班」とのせめぎ合いは最高潮を迎えている。殺伐とした物語の中で、唯一の〝癒やし系キャラ〟として注目される俳優がいる。だが、その柔和な表情からはうかがい知れない黒歴史が存在していた。
その俳優とは、富栄ドラム(31)のことだ。役どころは阿部寛(59)演じる警視庁公安部の捜査員の相棒。作中ではセリフを発せず、また今作出演を機に改名し、役名のドラムを芸名にしたこともあって、外国人俳優と思われている。が、実は神戸市出身の日本人で、しかも元力士である。スポーツ紙デスクが言う。
「中学3年時に伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)にスカウトされて角界入り。『富栄』という四股名でした。身長167センチ、体重122キロの小兵でありながら、最高番付は東幕下6枚目と関取一歩手前まで昇進しました。ところが、キャリアの後半は腰痛と股関節痛に悩まされて番付を上げることができず、21年3月場所を最後に引退しています」
すぐに俳優になったわけではない。実は、ユーチューバーに転身して、その顔を売ったのだった。
「現役時代から巡業先の土俵上でバク転を披露するなど、〝はーちゃん〟(お調子者)として有名でした。その持ち前の明るいキャラを生かして、21年4月に『ブヒブヒパーリー』というYouTubeチャンネルを本格始動させたのです」(後援会関係者)
登録者数(9月6日時点)こそ6万人弱だが、ショート動画を中心に総再生8000万回を超える、なかなかの人気チャンネルだ。
「ただ、初期にアップされた動画で、自分の四股名が書かれた番付札をゴミ箱に捨てるシーンを流して、相撲ファンの間でプチ炎上したこともありました」(前出・後援会関係者)
ゴミ箱に捨てたいほど、力士時代の忘れたかった過去とは何だったのか。「当時、伊勢ヶ濱部屋には日馬富士(39)が横綱として君臨。その付け人を富栄は務めていました。横綱の引退のきっかけとなった貴ノ岩(33)への暴行事件でもわかるように、酒が入ると手が付けられない状態になる。富栄は稽古以外でも、相当〝かわいがられた〟そうです。あまりに耐えがたい仕打ちに、7回も部屋から脱走してしまった。部屋の若い衆の間では『またアニキが逃げたってさ』と後ろ指さされていました」(前出・スポーツ紙デスク)
ちなみに、「アニキ」は角界で「愚か者」を意味する隠語である。今のドラムにとっては黒歴史だろう。だが、引退から2年半で人気俳優として注目されたラッキーボーイである。やはり当時からツイていた。
「現在の横綱、照ノ富士(31)が助け舟を出したのです。最初に大関になった頃に、富栄への執拗な〝かわいがり〟を見かねて『俺の付け人に』と涙ながらに親方に直訴したと言います。以降、照ノ富士が関取から陥落した一時を除いて、引退するまで付け人を務めた。互いに音楽の趣味が合い、福祉相撲やバラエティー番組では、照ノ富士のボイスパーカッションと富栄のラップをセッションすることもあった」(前出・後援会関係者)
ドラマではそのコンビネーションを阿部と発揮して、終盤のキーマンになるかもしれない。