イスラエルとヨルダン川西岸地区の狭間にあるユダヤ砂漠の洞窟で、ユダヤ兵士がローマ兵から奪い取ったと思われる、1900年前のローマ帝国の剣が同時に4本発見された。
イスラエル考古局が9月6日に発表したところによれば、発掘された4本のうち3本は、木と革で作られた鞘に入ったままの状態で、鉄製の刀身は60~65センチ。柄頭の特徴からみて、当時ユダヤに駐留するローマ兵が装備した標準的な剣で、洞窟に隠されたものだと考えられるが、これほど保存状態のいい剣が複数同時に発見されるのは、極めて珍しいことだという。
さて、使用されていた年代や場所は異なるものの、古代の剣として有名な存在ながら、今もって謎が深いとされるのが、イタリアに実在する「岩に突き刺さった剣」だ。
この剣があるのはイタリア、トスカーナ州の片田舎、モンテシエーピという町の、修道院近くに立つ礼拝堂だ。古代文明に詳しいジャーナリストが解説する。
「言い伝えによれば、剣は12世紀にこの地を訪れたガルガノという元騎士のもので、大天使ミカエルから『物欲を捨てよ』との啓示を受けたものの、『それは岩に剣を突き立てるくらい困難なことだ』と否定。ところが実際に岩に剣を突き立てると、なんと岩がバターのように柔らかくなり、簡単に刺さってしまったというのです」
目の前で起こった奇跡に驚愕したガルガノは、モンテシエーピの丘に突き立てた自分の剣を十字架として、神に祈りを捧げた。33歳で死去後はローマ法王により聖人として、その頭蓋骨が大天使ミカエル教会に安置され、剣の近くには遺体も埋葬されたという。
「2001年に周辺の発掘調査が行われ、ガルガノの遺体は発見されなかったものの、放射性炭素年代測定法での調査により、言い伝え通り、刺さった剣は西暦1100年~1200年頃のものであることが判明しました。また、この剣を盗もうとした者は野生の狼に腕を食いちぎられるという伝説の通り、発見されたミイラ化した手も同年代のものと分かった。長らく『アーサー王伝説を模倣した作り物』とされてきた説が覆ったと言われています」(前出・古代文明に詳しいジャーナリスト)
とはいえ、ガルガノの剣がいかにして岩を突き抜けたのかについては、依然不明。岩でなく土だった、という説や、あとから刺したという説もあり、真相は解明されていない。
現在、この剣は礼拝堂の中でアクリルに覆われ保存されている。今回、ユダヤ砂漠の洞窟で発掘された剣にも、不思議な伝説が生まれる日が来るかもしれない。
(ジョン・ドゥ)