それにしても、消費税増税からわずか3カ月足らずのこの時期に、トンデモ新税計画が相次いで飛び出したのはなぜなのか。
「補填財源のアテもないままに、大企業優遇の『法人税減税』を先行決定してしまったからですよ」
渋い顔で明かすのは、官邸の動静に詳しい自民党の有力議員だ。
6月中旬、安倍晋三総理(59)率いる政府・与党は来年度から法人税減税に踏み切ることを決定した。6月上旬に提出された党税調の法人税改革案を受けての決定で、これにより現行35%程度の実効法人税率が20%台にまで引き下げられることになったのだ。
実効法人税率は国(法人税)と地方(法人事業税など)を合わせた課税率。政府・与党は来年度から数年をかけて段階的に税率を引き下げていく予定だが、総理周辺からは「最終目標までの期間はなるべく短く」との声も聞こえてくる。この有力議員が続ける。
「すでに官邸内では『最終目標税率は28%』『目標達成期間は最長で5年』との具体的な数字も上がり始めている。ところが、1%の減税で吹っ飛ぶ税収額は5000億円弱。35%から28%への減税なら、実に3兆5000億円近い穴が開いてしまう。そこで、官邸と党を挙げての財源探しが始まったというわけです」
ところで、前述した携帯電話やパチンコへの課税プランには「ウラ」があった。安倍総理に近い官邸関係者は「ケータイとパチンコはダミーで、補填財源の本命は別にある」として、こう耳打ちするのだ。
「ケータイ、パチンコのW新税となれば国民の大反発は必至で、安倍総理といえどもそんなリスクは冒せない。まずは党にアドバルーンを上げさせ、官邸がこれを引っ込めて世論を鎮めた後、スタンバイさせておいた『真打ち』を登場させる。ズバリ、当面の本命は『中小企業課税』です」
これまで経営基盤の弱い中小企業については、国の法人税でも地方の法人事業税でも、救済のための軽減税率が適用されてきた。資本金1億円超の大企業が企業全体に占める割合は1%、対して資本金1億円以下の中小企業の割合は実に99%。この官邸関係者によれば、安倍総理は広大無辺なこの沃野に目をつけ、以下のような中小企業増税計画を急ピッチで進めているというのだ。
【1】資本金1億円以下で、かつ法人所得800万円以下の中小企業に適用されてきた法人税の軽減税率19%を大企業並み(25.5%)に引き上げる
【2】合わせて、リーマンショック後、中小企業に適用されてきた法人税の臨時的な軽減税率(15%)などの時限措置を廃止する
【3】資本金1億円超の大企業にのみ適用されてきた外形標準課税(法人事業税の一部)を同1億円以下の中小企業にも拡大する。