旧統一教会(世界平和統一家庭連合)とのズブズブの関係を問われ、国会会期中の10月24日に経済再生担当大臣を辞任した山際大志郎氏が一転、自民党の「新型コロナウイルス等感染症対策本部長」に返り咲き、またしても非難囂々の渦中にいる。
大臣辞任からわずか4日後の10月28日付で発令されたこの人事を巡っては、国民や野党はもとより、自民党内からも「執行部は何を考えているんだ!」などの批判が噴出。11月4日の衆院厚生労働委員会では、岸田文雄総理も「党の人事は、その人物の経歴や経験を踏まえ、総合的に判断されたものだ」などと、苦しい釈明に追われた。
実は、このトンデモ人事の背後には、麻生派の領袖である麻生太郎副総裁と、麻生派の重鎮である甘利明前幹事長の影がチラついている。岸田派の有力幹部が指摘する。
「後ろで糸を引いているのは、この2人でしょう。麻生さんらは、いずれ始まるポスト岸田レースで主導権を握るべく、支持率低迷に喘ぐ岸田政権に対して、静観の構えを決め込んでいる。ただし『邪魔はしないが、協力もしない』というのはタテマエで、岸田さんの目には、テイのいい恫喝と映っている。山際氏を巡る人事もしかり。狙いはズバリ、党内の各派閥には麻生派の隠然たる存在感を誇示しながら、岸田さんに対しては『言うことを聞かなければ、足を引っ張る』と脅しをかける、といったところだろう」
事実、麻生氏らは岸田総理に水面下で圧力をかけるとともに、山際氏にこっそりと「入れ知恵」していたというのだ。岸田派の有力幹部が続ける。
「もともと岸田さんは、山際さんを大臣として再任させたくなかった。ところが、それを強引にねじ込んだのが、麻生さんと甘利さん。その後、旧統一教会問題で火ダルマになった山際氏に対して、岸田さんは臨時国会が始まる前での辞任を迫ったものの、麻生氏らに入れ知恵された山際氏は、頑なにこれを拒み続けた。更迭に踏み切れば総理の任命責任が厳しく問われることを見越しての、悪知恵だ」
結局、事態は国会会期中に大臣辞任という最悪の幕切れとなったが、
「返す刀で、麻生氏らは山際氏をコロナ対策本部長に就任させることを画策。山際氏が復権したことで、岸田さんの面目は丸潰れとなった。要するに山際氏は『岸田降ろし』へ向けて、麻生さんらが落とした爆弾だったということだ」(自民党関係者)
味方をも笑いながら蹴落とす──。政界が伏魔殿と呼ばれるゆえんだ。