元祖鉄人・衣笠祥雄氏といえば、連続試合出場の日本記録が思い浮かぶが、被死球数もかなりのものだ。その数「161」は、清原和博氏の196、竹之内雅史氏の166に続く3位の記録である。
野球解説者・田尾安志氏のYouTubeチャンネル〈田尾安志【TAO CHANNEL】公式YouTube〉に9月19日、元広島の達川光男氏が登場し、衣笠氏の人柄が分かる被死球エピソードを明かした。
それは1979年8月1日の広島×巨人戦。先発のマウンドに上がった巨人・西本聖氏が、7-1の大量リードを奪っていたにもかかわらず、7回先頭の三村敏之、萩原康弘を連続死球で出塁させる。続く衣笠氏にも得意のシュートを思い切って投げ込み、左肩にぶつけてしまう展開に。達川氏が振り返る。
「西本が『すみません』って来たら『危ないから、お前すぐベンチに戻っとけ』って衣笠さんが言うて、そこから大乱闘ですよ。次の日、江川(卓)がピッチャーで(衣笠氏は)3球三振したけど、衣笠さんカッコ良かったよね。『1球目はファンのため、2球目は自分のため、3球目は西本君のため』って…」
2018年4月23日に衣笠氏がガンで死去すると、西本氏がこの死球エピソードを持ち出し、人柄をしのんでいる。
この試合、西本氏は動揺して8-8の引き分けに。試合後、衣笠氏の自宅に謝罪の電話を入れると、こう返された。
「大丈夫だから心配するな。それより勝っていた試合に勝てなくて、お前は損したんだぞ」
逆に気遣われてしまった西本氏。ところが翌日、衣笠氏の骨折がわかり、愕然とする。
「にもかかわらず、連続試合出場記録がかかっていた衣笠氏は代打で出場、江川と対峙したわけです。西本氏は、衣笠氏が記録を更新するたび、心から嬉しかったと語っていますね」(スポーツ紙デスク)
鉄人は他球団の投手からも慕われる人格者だったのである。
(所ひで/ユーチューブライター)