オープニングからもうハチャメチャだった。「徹子の部屋」(テレビ朝日系)9月26日放送のゲストは、吉本新喜劇の島田珠代だ。
登場するなり変顔を決めて踊り、着席するとすかさず、
「徹子さん、大ファンなんです。夢みたい」
と大興奮。そして挨拶もそこそこに、言い放った。
「徹子さん、私、いま現在(下着を)穿いてますか。緊張しすぎて、朝穿いたはずなんですけど、確かめてさせてもらってもいいですか」
徹子が「ええ、どうぞ。お確かめ下さい」と答えると珠代は立ち上がり、徹子に手拍子を要請。大股で交互に足を振り上げると、踊り出した。
「珠代、パンティーテックス! 珠代、パンティーテックス! パンティー! パンティー! パンティーテックス!」
ひと呼吸おいて「穿いてました!」とお約束のネタをやりきったのである。
「よかったです」と拍手を送る徹子だが、ネタにはツッコミを入れることもなく進行。
「もう点検することないですか。始めさせていただいてよろしいですか」
芸人が持ちネタを披露する⇒徹子が特に感想を述べるでもなく、軽くいなす⇒芸人が居心地悪そうな表情に…という芸人がゲスト出演した時あるあるの洗礼を、珠代も受けた。しかも、オープニング早々に。
仕切り直して、徹子によって珠代の半生が軽く紹介されると、ここからトークがスタート。幼少期の思い出から芸人になった流れ、一度目の結婚と離婚、そして、二度目の結婚の話に。するとそれまでの明るい流れから一変、2人目の夫がステージ4の直腸ガンに侵されたこと、抗ガン剤治療の辛さを珠代が理解できなかったことで夫婦仲が悪くなり、別居することになったこと、当時3歳だった娘を、夫が「生きる糧だから」と連れていってしまったこと…。その壮絶な半生を、涙を流しながら話す珠代だった。
夫はガン告知の11年後に亡くなり、成長した娘との生活が始まるが、1年ほど経って娘の不満が爆発。
「ママは私とちゃんと生活もしてないし、病気になったら看病もしてない。苦しい時に一緒だったりとか、小学校の時間割を一緒にしてくれたりとか、それは全部お父ちゃんがしてくれてて。ママはそんなのしてくれなかったのに、怒るだけ怒るなんて、そんなのズルい!」
娘からそう言われ、大喧嘩の末に「私はおばあちゃんと暮らす」と宣言されたという。結果的には娘と仲直りしたとはいうものの、珠代は大泣きだ。徹子が娘からの手紙を読み上げると、さらに感極まって大号泣である。
オープニングのハイテンションからのあまりの落差に、困惑してしまった。これで涙をぬぐった後に、ゆりやんレトリィバァのように変顔でも披露してくれればこちらとしても救われるが、そんなおふざけなどもなく…。もっとも、やったところで徹子に冷たくあしらわれるのがオチだが。
最後に涙でぐしゃぐしゃになった珠代の顔がアップになったが、彼女が涙をぬぐっていたハンカチの柄が「おぱんちゅうさぎ」だったことを見逃さなかった。人に歴史あり。波瀾万丈な珠代の人生を知った今、「パンティーテックス」がありがたく思えてきた。
(堀江南)