今シーズン中の復帰は絶望的だ。DeNAのキャプテン、佐野恵太外野手が「右有鉤骨骨折」と診断された。佐野は9月のヤクルト戦でスイング時に右手首に痛みを覚え、病院で診察を受けていた。
有鉤骨を折ることは強打者の証しと言われ、過去には中田翔、松田宣浩、中村紀洋、二岡智宏、マイク・トラウトらが負った。ただ、手術やリハビリ方法の選択ミスやケガの悪化によって選手生命にかかわる事態に追い込まれ、完全に再起できなくなってしまうおそれがある。知られているのは巨人の原辰徳だ。1986年9月に広島カープの守護神・津田恒実の豪速球をファウルチップして骨折。叫び声を上げて脂汗を吹き出し、左手首を押さえてうずくまったシーンは衝撃映像として残っている。スポーツ医療に詳しいジャーナリストが言う。
「原は骨折後、左手で押し込むスイングができなくなり『事実上、バッター原辰徳はこの骨折で終わりました』と、のちに語っています。中村も治療がうまくいかず、手術を繰り返して慢性的な痛みと闘いました。後遺症が残る場合もあり、手術は慎重に行われます。骨片で腱や神経が損傷することや、血行を阻害することもあるので、条件次第ではリスクの高い術式となります」
佐野の今シーズンの成績は141試合の出場で、打率2割6分4厘、13本塁打、65打点だった。
「昨年、最多安打のタイトルを獲りましたが、今年はフルスイングが不格好な時があり、精彩を欠くことがしばしば。以前から手首に違和感を感じていたのかもしれません」(スポーツ紙デスク)
チームのムードを高める大黒柱を欠いた状態で、DeNAはクライマックスシリーズを戦うことになる。
(田中実)