日本維新の会は、同党所属の鈴木宗男参院議員が事前の届け出もなくロシアを訪問したことで、処分を検討している。表向きは「(ロシアをめぐる)党の方針と大きく異なる」(共同代表の吉村洋文大阪府知事)としているが、両者の対立の遠因は別のところにある。それは衆院北海道10区(空知、留萌管内)をめぐってのことだ。
日本維新の会は次期衆院選に向けて、これまでの公明党との小選挙区での住み分けを解除し、公明党が候補を立てる全11選挙区で対抗馬を立てる方針を決めている。すでに北海道以外の10選挙区では候補者が決まっているが、北海道10区では公明党現職である稲津久氏の対立候補を擁立できていない。それもそのはずで、鈴木氏が率いる地域政党「新党大地」がすでに稲津氏の推薦を決定しており、足並みが乱れているからだ。
維新関係者によると、鈴木氏は長女の鈴木貴子氏が比例北海道ブロックから北海道7区(釧路、根室管内)の候補として転出することが決まっている。娘の当選のため、公明党との間で7区と10区で選挙協力のバーターを勝手に決めてしまったのだという。
これは維新の方針とは異なる対応で、馬場伸幸代表らは鈴木氏の身勝手ぶりに激怒し、「2025年の参院選では鈴木氏を公認しない」と周辺に漏らしていた。そこに今回、鈴木氏が党への事前報告がないまま訪ロしたことで、処分の口実ができたというわけなのだ。
鈴木氏も「(海外渡航届け出の)手続きは秘書が時間的に遅れた」と釈明しているが、確信犯である。自らの協力なしに維新が北海道で勢力を伸ばすのは難しいと、鈴木氏は維新側の足元を見ている。
全国的には追い風の維新が、厄介な問題を抱えることになった。
(喜多長夫/政治ジャーナリスト)