日露首脳会談が成功のうちに終了。10年ぶりとなる両国首脳による共同声明が発せられた。これにより、「北方領土返還交渉」の“入り口”が再び開かれた──。北方領土問題に命を賭けて取り組む政治家、鈴木宗男氏が交渉の“出口”について熱く語り尽くした。
何だ? 返還後の北方領土にカジノ場でも作れっていうのか! 北方四島(択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島)は知床と同じ生態系が存在している。世界遺産に登録されてもおかしくない自然があるんだよ!
北方領土問題への国民的関心は決して高いとは言えない。それは、返還後の島々の姿が想像できないからではないだろうか──。
本誌が「返還されたら一大リゾート施設ができるなんてなれば、国民の耳目を集めるのでは」と水を向けると、新党大地代表の鈴木宗男氏(65)は冒頭のように猛然と反論してきた。
国民的関心が低いのは、マスコミの報道にも問題があるのではないですか。沖縄の基地問題、竹島や尖閣諸島に比べると、北方領土の扱いが小さすぎる。マスコミの関心が低いのが一つの原因。また、あなた方が言うように「空白の10年」も原因の一つでしょう。
小渕(恵三)さん、森(喜朗)さんとロシアとの交渉を進めてきたのに、01年に小泉(純一郎)さんが総理になったら、まったく逆のことをしてしまった。それまで、小泉さんは外交をしてきた経験がなかったから、不勉強だったかもしれない。それから、田中(真紀子)さんが外相としてふさわしくない政治家だったというのもある。外交の陣頭指揮を執る総理と外相に最も重い責任があるのは当然だが、一方で官僚のサボタージュというのもあるんですよ。
日露の交渉が前進するのがおもしろくないのか、官僚は何もしなかった。いいですか、外交というのは積み重ねが大事なんです。勉強が足らなくて、総理や外相が当時の日露関係の状況を理解していないんだったら、官僚が進言しなくてはダメなんだ。
それも、「殿、間違っています!」と、腹を切るぐらいの覚悟を持って進言する。それが国益を守るということなんですからね。
そうした状況から脱却する一歩として、今回の日露首脳会談は大成功だったと思っていますよ。
4月29日に行われた安倍晋三総理(58)とロシアのプーチン大統領(60)とのトップ会談後、共同声明が発表された。03年の「日露行動計画」以来の共同声明となり、「空白の10年」を乗り越える道筋がつけられた。
日露間の平和条約締結、そして北方領土返還へ向けて前進したのだ。会談後の会見で、安倍総理も「交渉加速化で合意したのは大きな会談の成果だ」と胸を張った。
しかし、これはまだ“入り口”にすぎない。
北方領土問題の“出口”は四島を全て解決するということです。ただ、外交交渉において、片方の国が100点でもう一方の国が0点という結果はありえない。お互いが納得のできるところで、着地しなくてはならないんです。だから、“出口”に向かって、現実的にどう交渉していくかというのが非常に重要なんです。