水野雄仁スカウト部長が会議直前までドラフト1位を公言しないという今年の巨人のドラフト戦略に、他球団スカウトが疑心暗鬼になっている。スポーツ紙アマチュア野球担当記者が言う。
「別にマスコミにドラフト1位を公表する義務はないわけですが、会議2週間前ともなれば、大体は決まっているもので、他球団のスカウトなら情報をつかんでいる。ところが『今年の巨人は分からない。何か仕掛けてくるつもりでは…』という声が聞こえてきます」
球界関係者も首をひねる。
「例えば大学屈指の右腕・西舘勇陽の扱いです。阿部慎之助監督体制になり、普通なら中央大学の後輩をドラ1候補のひとりと公言しているもの。にもかかわらず、公言しないのは不思議ですしね。なんとかドラ1、ドラ2を競合せず一本釣りする作戦を練っているとしか思えない。巨人はドラフトのクジ運が悪いですから」
巨人の場合、チームが低迷するとドラフトで「何か」しでかすのが常套手段。これまでも江川卓の「空白の1日」のほか、清原和博の1位指名を公言しながら、会議当日に桑田真澄を指名したKKドラフトなど、球界を騒然とさせる事件を起こしている。
また、元木大介や長野久義、菅野智之らを浪人させ、翌年に指名して入団させるというやり口も繰り返してきた。
2年連続Bクラスの巨人にとって、選手を育てながら勝つという選択肢はない。阿部新監督に課されるのは、Aクラス確保。これが絶対条件だ。それだけに、即戦力の投手はひとりでも欲しい。今ドラフトは青学大・常広羽也斗、亜細亜大・草加勝、桐蔭横浜大・古謝樹ら大学生の好投手が揃っているが、
「巨人はなりふり構ってはいられない。残り2週間、どんな作戦を練っているか…」(前出・アマチュア野球担当記者)
「前科」があるだけに、興味津々なのである。
(阿部勝彦)