「90歳。何がめでたい?」
玉山鉄二から花束を渡されると、「ありがとうございます」と一礼する大女優・草笛光子。そして言い放ったのが、このセリフだった。
10月22日に90歳の誕生日を迎える草笛にサプライズの花束が登場したのは、実写映画「次元大介」が10月13日からの世界同時配信を前に開催された、ワールドプレミアでのことだ。これは動画配信サービス「prime video」のAmazonスタジオと、アニメ「ルパン三世」を手掛けたトムス・エンタテインメントの共同製作による、オリジナルストーリー。玉山が次元を、草笛はガンスミスの矢口千春を演じている。
草笛はこうも言った。
「90歳と戦おうと思ったけど、戦ったら損。戦わないように受け入れて、90歳を大事に生きてみようと思います」
既に気付いた人はいるだろうが、冒頭のセリフは小説家・佐藤愛子氏が2016年に刊行したエッセイ「九十歳。何がめでたい」を拝借したものだろう。「女性セブン」の連載に加筆修正がなされたもので、自身の体に起こる故障を嘆き、時代の進歩に怒りを露わにし、若い世代を叱りつつ鼓舞する作品だ。2017年には発行部数が100万部を突破し、オリコン年間本ランキング総合部門で1位のベストセラーになった。
本を読んでいない人でも、こんなCMを覚えていることだろう。
「私、99歳というだけで、この本のCMに出ています」
「カズエです」「ミチエです」「あんた92歳になったんだってねえ」「まだ91歳だわ」「どっちでもええわ。アッハッハ…」
そんなユニークな掛け合いもあったインパクト大のCM。
佐藤氏は11月5日にめでたく100歳を迎える。「百歳。何がめでたい?」という声が聞こえてきそうだ。
(所ひで/ユーチューブライター)