パレスチナ自治区のガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」によるイスラエルへの電撃攻撃で、イスラエルは少なくとも1200人の死者を出し、そのほか100人近い人質も取られる未曽有の大惨事となった。
怒ったイスラエルはガザ地区への報復攻撃で双方の死者は日々上積みの一途。まさに無限ループの戦争に突入しつつある。
それにしても、今回のハマスの類を見ない大規模攻撃は、なぜこのタイミングで起きたのか。軍事専門家などの間では、背後でイランと一体でロシアがかかわった可能性を指摘する声が圧倒的だ。
軍事アナリストはこう指摘する。
「ロシアのプーチン大統領の側近、ラブロフ外相とハマス幹部が昨年西側に確認されただけで2度、ロシア国内で直接会っている。非公式でのコンタクトも十分に考えられ、関係は密だったと推測される。そうした中、1年以上かけてイスラエル侵攻の策を練っていたという説が有力です。理由は何なのか。ウクライナ侵攻が長引くロシアにとって、最大のネックは欧米によるウクライナへの武器や資金提供。その欧米の力を何とかして削ぎたいわけです」
ハマスがイスラエルを攻撃すれば、親イスラエルのアメリカはそちらに資金や軍事力を注がざるをえない。これでウクライナへの支援が減速し、ウクライナ攻略がやりやすくなるというシナリオだ。
軍事アナリストは、その証拠として次の2点をあげる。
「一つはロシアのラブロフの談話。ラブロフはハマス攻撃後の記者会見で、アメリカがイスラエルとハマスの紛争に重きを置きウクライナへの武器供与が鈍れば、プーチン大統領の目的は『より早く達成される』という大胆な発言をしていますからね」
2つ目はハマスの「攻撃手法」だという。
「今回、ハマスは強固なイスラエルの防空システム『アイアンドーム』を破るため、同時に何十、何百のロケット弾を発射し成功させている。同時にイスラエルとの境界のフェンス約80カ所を破って1000人前後の戦闘員が一気になだれこみ、軍基地や農村共同体や集落を襲い殺戮を繰り返した。ロシア軍が昨年、ウクライナ侵攻時にキーウ近郊ブチャで民間人400人以上を殺害した残虐行為と重なる点が多い」(前出・軍事アナリスト)
いずれにしても今後、ロシアがこの中東戦争にどうかかわってくるのかに注目だ。
(田村建光)