「ロンドンハーツ」(テレビ朝日系)で10月3日、10日と2週にわたって放送されたのが、「長年、貧乏と不摂生でほとんどの奥歯を失った長谷川雅紀(錦鯉)が、インプラント治療によって奥歯を再び手に入れる」という企画だ。
プロジェクトが極秘裡にスタートしたのが、2021年暮れ。錦鯉が「M-1」で優勝するよりも前の話だというから、なかなかにして壮大なストーリーだ。およそ2年半も密着し、途中、多忙によって治療にかなりの時間を要したものの、無事治療が終了したのを受けて、このたびの放送となった。
初回3日の放送では、企画の流れと今までのいきさつが明かされた。それを引っ張りに引っ張り、週を跨いでようやく、バッチリ奥歯が入った長谷川の口内を公開。久しぶりに歯が揃った状態で、ステーキやマカダミアナッツチョコ、煎餅、鶏の軟骨揚げといった堅めの好物を口にした。まだ違和感があるとは言いつつも、思う存分、噛める喜びを、文字通り噛みしめる長谷川。
と、そこに奥歯のない我が子をずっと心配していた長谷川の母から、奥歯が入ったという知らせを受けての喜びのメッセージVTRが流れる。長谷川の前に用意されたのは、彼にとっての「おふくろの味」である「納豆おにぎり」だった。今までたくさん迷惑をかけた母への感謝を口にしながら思い出のおにぎりを頬張ると、大粒の涙を流して嗚咽する。その姿にこちらも思わず、もらい泣きしてしまった。するとMCの田村淳が、
「そんなに泣いて喜んでくれるんだったら、本当に握った甲斐があるよ」
と声をかけた。ん、どういうことだ!? 暑い中、長谷川の地元・北海道からおにぎり(しかも納豆入り)を運んでいたら腐ってしまうから、とのことで、淳が握ったおにぎりだったことが明かされたのである。その事実を知った時の、長谷川の呆気にとられた表情に、思わず爆笑した。
さらにラスト。今回の企画でお世話になった歯医者さんからと封書を渡され、手紙かと思って開く長谷川。中を見て、ガックリと膝をついた。手紙の内容を聞かれると「請求書 510万6200円」と読み上げた。インプラント10本で510万円ナリ。てっきり番組持ちだと思っていた治療費が自腹であることを知らされ、
「タダだと思った…。入れなきゃよかった」
またもや涙を流す長谷川の複雑な表情に、またまた大爆笑だった。
昨今のバラエティー番組は撮って出しの即席タイプが多いが、2年半もの時間と手間をかけた企画は面白い。明石家さんまは「芸人は泣いてはいけない」と言っていたが、50歳を過ぎて売れた苦労人の涙には哀愁も加味され、笑いも倍増し。これを神回と言わずしてなんと言うか。
(堀江南)