ブラジル代表を破る「マイアミの奇跡」を起こし、数々の伝説を残した1996年アトランタ五輪の日本代表。28年ぶりに世界の扉を開いた若き戦士たちは本大会だけでなく、予選でも多くの伝説を作った。
その1つが五輪出場をかけて戦った準決勝のサウジアラビア戦。勝てば出場という緊張感の中で、前園真聖が前半4分、後半12分とゴールを決め日本が優位に立つ。しかし、ここからサウジが猛攻をしかけ1点を返す。その後も攻撃の手を緩めないサウジに対し、日本はなんとか守りきり本大会出場を決めた。
歴史を切り開いた1戦の中でも特に語り草となっているのが、前園が滑ってころんだシーンだ。サッカーライターが振り返る。
「サウジの攻撃が続くなか、日本はコーナーキックを獲得。キッカーの前園がボールをセットすると数歩下がって助走を始めました。その瞬間、足を滑らせてうつ伏せに倒れました。すぐに立ち上がるも左足を痛めたのか足を引きずり、なかなかボールを蹴りませんでした。テレビ中継の解説者が前園を心配していましたが、どう見ても露骨な時間稼ぎでした」
そんなシーンの真相を前園氏が自身のYouTubeチャンネルで明らかにした。アトランタ五輪の予選を共に戦った田中誠氏と服部年宏氏をゲストに招き、アトランタ五輪予選を振り返ると、服部氏は問題のシーンを「下手な小芝居」とバッサリ。田中氏が芝居なのか本当なのか前園氏に聞くと、前園の答えは「本当というか、ちゃんと考えて滑った」。やはり芝居だった。
驚いた田中氏に対し演技であることはわかっていた服部氏だが「あれで一息つけた。チームの勝利のために今なにをすればいいかというのをやった」と感謝していたという。
現在はタレントとして活躍中の前園氏。演技力を活かして俳優に手を広げてみてほしいものである。
(鈴木誠)