昨年のカタールW杯ではベスト8の壁に涙を吞んだ日本代表。それでも、大会で撃破したドイツが要望した今年9月の「リベンジマッチ」で見事返り討ちにするなど、世界中で「強すぎる!」と評価が急騰している。次のW杯ではベスト8、いやそれ以上も? 元日本代表GKの小島伸幸氏が語る、森保ジャパンの「強化指定選手」とは。
(現地時間9月9日の)2度目のドイツ戦(日本が4-1で快勝)後、相手のミュラー選手が「日本は世界トップ10に入る」と発言して話題になりました。多少のリップサービスはあるとしても、海外リーグで活躍する選手がその経験を還元するいいサイクルができあがっており、確かに強くなったと思います。
それでも、アメリカ、カナダ、メキシコが共催する次の26年大会でベスト8以上の成績を残せるか、と言えば、「わからない」というのが私の意見です。理由の1つは単純で、参加国数がこれまでの36から48に増え、決勝トーナメントで2回勝たないとベスト8になれないから。
サッカーで強豪国と呼ばれる国と、それ以外の国の一番の差は何かといえば、私は「毎回のようにW杯ベスト8に残ること」だと思っています。02年の韓国や14年のコスタリカなど、常連国以外が1チームだけいきなり好成績を残すことはよくありますが、優勝争いをするような強豪国は必ず、ベスト8の残り7カ国に残ります。
日本も久保建英選手(22)や三笘薫選手(26)、冨安健洋選手(24)らがいる今の陣容で、ベスト8に残ることはできるかもしれない。強豪国の背中は、もう確実に見えている。ただ大事なのは、一度突き抜けた後に、それを維持できるかだと思うんです。
その意味で次の大会も、その次の大会もベスト8以上の成績を残すためには、日本代表は何を強化するべきなのか。私が期待しているのは、先日のキリンチャレンジカップで、チュニジア戦(2-0で勝利)に先発したシント=トロイデンVV(ベルギー)のGK・鈴木彩艶選手(21)です。
これは私が現役時代にGKだったから、というのもあるかもしれませんが、現代表の強化ポイントを考えた時に、どうしてもGKに目が行ってしまう。冨安選手にせよ三笘選手にせよ、他のポジションは海外クラブにただ在籍するだけじゃなく、ちゃんと活躍している選手で埋められるのに対し、GKだけがそうではない。海外クラブで「絶対的な守護神」と呼ばれるような選手が育っていません。鈴木選手にはそうなれる可能性があると思っています。
まず上背は、世界標準を超える192センチ。ガーナ人の父を持つハーフで、運動能力も抜群。まだ21歳という若さも魅力です。
今夏、鈴木選手には、英プレミア・リーグの名門中の名門、マンチェスター・ユナイテッドFCから獲得オファーが届いていました。ですが本人が「今はとにかく試合に出ることが重要」と固辞し、リーグレベルは下がるものの、若手の登竜門的なベルギーリーグを選択しています。若いのに、こういう地に足の着いた判断ができるのも素晴らしいと思います。
森保一監督(55)も、鈴木選手を育てていくと決意したように思えます。22年の東アジアサッカー選手権で、当時、浦和レッズで常時試合に出場していなかった鈴木選手を抜擢したくらいですから。
今はまだ粗削りな部分も多いですが、ポテンシャルでは間違いなくナンバーワン。川口能活(48)や川島永嗣(40)も達成できなかった海外クラブのレギュラーGKになり、日本代表でも不動の守護神として活躍できるよう、順調に成長を続けていってほしいと期待せざるを得ません。