今年4月に行われた東京都江東区長選で初当選を果たした木村弥生区長の陣営が、選挙期間中に投票を呼びかける有料広告を動画サイトに掲載していた公職選挙法違反事件。その後、木村氏を支援していた柿沢未途衆院議員が関与を認め、就任から間もない法務副大臣の辞職劇に発展するなど、事件は不気味な広がりを見せ始めている。
そもそも同事件はその出発点からして、異例ずくめの様相を呈していた。全国紙司法担当記者が指摘する。
「通常、区長レベルの公職選挙法違反事案は、サンズイ(汚職事件)を扱う警視庁捜査2課のマターになるはず。ところが今回は、鬼の東京地検特捜部が乗り出してきた。選挙期間中に有料動画広告を出した程度の事案で、木村氏の自宅のほか、区長室にまでガサが入るのは、異例中の異例と言っていい。おそらく地検特捜部は、もっと大きな事件を狙っているはず。要するに有料動画広告事案は、他なる入り口にすぎないということです」
そんな中、一部報道として、問題の選挙期間中に柿沢氏の秘書らが複数の江東区議らに買収を持ちかけていたのではないか、との疑惑も浮上し始めている。東京地検特捜部が秘かに狙っているとされる「本丸」は、この疑惑なのか。
「仮にこの疑惑が事実だとすれば、例の河合克行・案里夫妻による選挙買収事件と全く同じ構図になる。しかも克行氏が法務大臣職、そして柿沢氏も法務副大臣職にあったという点も、奇妙な一致点と言っていい。いずれにせよ、選挙買収は重大な公選法違反に該当し、今後、地検特捜部が柿沢氏らから詳しい事情を聞くなどして、立件に向けて動き出すことは間違いないでしょう」(前出・司法担当記者)
目下、一部野党は法務副大臣を辞職した柿沢氏の議員辞職を要求している。精鋭が揃う東京地検特捜部は、江東区発のサンズイ事件に、どこまで踏み込むことができるのか。今後の動きが注目される。
(石森巌)